焼岳から日本海までの山旅(3)

4日目の朝はみごとな朝焼けでした。
日の出前に出発しようとしていたら昨夜話しこんだKさんたちが来たので、ゆっくりストレッチをしたり、靴のひもを結んだりして話していました。すると空が赤くなり始め、みるみるうちにそれが広がっていったのです。みんな「すごい、すごい」と言って、高い場所にかけあがりました。あっちへ走りこっちへ走りと、「まるで子どもですね」と苦笑しあったほどです。山では朝焼けや夕焼けがさぞやきれいに見えるだろうと思いきや、そんなにすごい光景には出会えません。ところがこの日は格別でした。

南岳小屋からの朝焼け

一騒ぎが終わって槍ヶ岳に向かうと、穂先(槍ヶ岳の頂上のことです)から降りてくる人たちが渋滞をおこしていました。急角度の岩場は上りよりも下りが怖いのです。つっかえると途端に渋滞します。時間のロスを心配しつつも一応ピークは踏んでおきたいので登りました。すばらしい眺望が広がっていました。
槍ヶ岳頂上

西鎌尾根を下り双六小屋に着くと、期待していた牛丼は品切れで、ふたたび大盛りカレーを食べました。大盛りといってもレトルトカレーなので、ご飯が増えるだけです。ルーが増えることはありません。ときどきツウぶって「双六小屋のカレーはうまいんだよなー」とのたまうオッサンに出くわしますが、どうかしています。他の小屋のレトルトカレーと変わりませんから。双六小屋のカレーはなぜか味噌汁が付いて1,000円です。

北アルプス南部にはめずらしく、双六小屋は水が豊富に出るところです。このため汗をかいたTシャツなどを洗い、ザックにくくりつけて干しながら歩きました。宿泊予定の三俣山荘のテント場に着いたのは13時半頃。行動時間は地図上のコースタイム11時間の7割くらいで、まあまあの速さでした。

5日目は16時間を越えるコースで、後半に激しい上り下りがあるため疲労困憊は必至でした。3時には出発しないといけません。ところが目が覚めたら、もう3時20分! 大寝坊です。隣のテントの4人家族の物音で起きました。その家族には前日に「明日は夜中に出るので、物音で起こしてしまったらすみません」なんて言ってしまっていました。いやはや恥ずかしい。アラームをかけるべきでした。もしかしてわざと物音を立てて起こしてくれたのかもしれませんね。感謝です。

カロリーメイトを口に入れつつ、急いでテントをたたみ、トイレをすませて4時すぎに出発しました。テント泊は設営・撤収に時間がかかるのです。ヘッドランプを点けて鷲羽岳に登り、頂上で豊川山岳会のKさんと知り合いになりました。山岳会のサイトを作っていると聞いたので、Kさんの後ろ姿を写真に撮り、帰宅後にそのサイトにお送りしました。山でお会いした人たちと帰宅後も簡単に交流できるのが、最近の登山の楽しいところです。

つづいて野口五郎岳を越えると野口五郎小屋です。降りていくとき足元に驚きました。なんと道が掃き清められているのです。まるでお寺の庭です。写真でわかるでしょうか。

野口五郎小屋

数人が通れば踏み消されてしまうというのに、小屋の人も粋なことをするものですね。僕は踏むのが惜しくて、できるだけ岩の上を伝って歩きました。その後、烏帽子小屋のキャンプ場では渦巻き状の砂紋まで見ました。

烏帽子岳キャンプ場
烏帽子岳キャンプ場

なんでしょうかこの枯山水ブームは(笑)。次回来るときは、この砂紋の上にテントを張ってみたいものです。

野菜・果物系に飢えていた僕は、野口五郎小屋ではカップラーメンと野菜ジュースを、烏帽子小屋ではオレンジジュースをいただきました。烏帽子岳はてっぺんに大きな岩が一つあります。ピークを踏んでおきたい僕は、ガクガクブルブルしながらまたがりました。

烏帽子岳
烏帽子岳

楽しんでいられたのはここまでで、この後には試練が待ち受けていたのです。

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