知識をムダにしない、正解へのプロセス

当方の授業や教材を使っている人は、
「何を覚えるか」という情報で、他の受験生に負けることはありません。
「どう覚えるか」という点でも負けないでしょう。
ただし、最後にもう一つ残っているハードルがあります。
それは「問題をどう解くか」という点です。
解答を導き出すプロセスが間違ってしまうと、
解ける問題も解けなくなります。
それをお見せするのが、演習授業なわけです。
問題集に付属する紙媒体の解説では、やはり限界があります。
そこで、講習や映像・音声教材で、
問題を解くプロセスをお伝えしているのです。
油断ならないのは、ハイレベル問題を正解できたとしても、
そのプロセスが「たまたま当たった」だけの的はずれな方法だったら、
別の問題には生かせないどころか、
弊害となってしまう場合があるのです。
河合塾では問題解説を行う時間があまり取れていないので、
そういう点で不利にならないように、努力してください。
「日本史道場」を受講した人には、
あそこでやった多くの問題の解法を、たどり直してもらいたいです。

さて、その問題の解き方でつまづいてしまった方からの質問を、
紹介します。

<Sさん>
石黒先生、こんにちは!!お忙しい時期に申し訳ありません…。藤沢現役館で4月から先生の通年授業を受けているSと申します。実はこの間、学校の授業中にやった問題でどうしても納得できないものがあったので教えていただきたいです。たぶん、河合のセンター予想問題かなにかではないかと思います。

問 下線部b(7世紀半ばに行われた国政改革)について述べた文として誤っているものを、次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。
(1)孝徳天皇を立て、中大兄皇子は皇太子として実権を握った。
(2)大化の元号をたてるとともに、都を飛鳥から難波に移した。
(3)皇族・豪族の私有地・私有民を廃止して、国家の所有とした。
(4)八色の姓を定め、豪族を新しい身分秩序に編成した。

…正解は(4)です。私は、(3)にしてしまいました。(1)と(2)はノートの大化の改新のくくりのところだと思ったのですぐ消せて、(4)は天武天皇の時代のことだなとは思ったのですが、(3)の『豪族の私有民廃止』から天武天皇の時代の部曲の廃止に結び付けて、(3)も(4)も天武天皇の時代だと思い、迷いました。そして、皇族の私有地、私有民や豪族の私有地は書いてなかったなと思い(3)を誤りだとしたのですが……。
解説には「7世紀半ばに行われた国政改革」とは、645年のいわゆる乙巳の変に始まる大化の改新のことであり、(4)は7世紀後半の天武天皇の時代のことだからだめだと書いてありました。教科書には「改新の詔」で豪族の田荘・部曲を廃止し、公地公民制への移行を目指す政策が示された。天武天皇は675年に豪族領有民をやめた。と書いてあり、改新の詔の史料には(3)のようなことが確かに書いてありますが、国家の所有というところがどうもひっかかるのと、先生のノートには天武天皇のところで部曲の廃止、公民化となっていたので、どう解釈したらいいのか困惑してしまいました…
学校の先生に聞いたところ、公地公民制で(3)のことを定めたと思うしかないといわれたうえに、そんなの絶対入試にでないから!といわれ、石黒先生のノートに書いてあるからでるってば!!!と心の中で思ったのですが…。ものすごく長くなってしまって本当に申し訳ありません。本当に全く復元が追いついていなくてあせっているところです、、それからこんなに長くなった上に申し訳ないのですが、第一志望が立教文学部なので、ぜひサンプルのURLを送っていただけらば…と思います。よろしくおねがいしますっ!!

<石黒>
返信が大変遅くなり申しわけありません。
「皇族の私有地、私有民や豪族の私有地は書いてなかったなと思い(3)を誤りだとした」
とのことですが、一方で、
「(4)八色の姓を定め、豪族を新しい身分秩序に編成した。」は、
「確実に」7世紀半ばではありませんよね?
選択肢を比較して、「確実に」誤りである方を選んでください。
言いかえると、作問者が正解としてそうな方を選ぶというわけです。
部曲の廃止については、『日本書紀』の改新の詔では、
廃止と言っていることは、知っていましたか?
この史料は超頻出です。それをそのまま受け取れば正文となります。
要するに、天武天皇の時に部曲を廃止したことは、
中学生の日本史などでは扱わないような、
一段レベルの高い知識だったのです。
学校の先生の発言がはからずもそれを証明してしまっていますね。
細かいところにかみついて、
大きな誤りを見つけられないのではもったいないです。

センター試験では、細かい知識が邪魔をして、
わりと簡単な正誤問題が解けなくなっている人がいます。
変な話、理系の受験生など、日本史を大雑把に学習している人の方が、
迷うことなく正解してしまうことがあります。
早稲田の問題には歯が立たないのに、です。
センター試験なんて本命じゃないと割り切っている人は、
気にしなくてもかまいませんが、そうでない場合は、
今からでもセンター試験の正誤問題に慣れるべきでしょう。
『あるある正誤問題』をお勧めします。