焼岳から日本海までの山旅(2)

1日目は中ノ湯というところから登りはじめ、焼岳を越えて西穂山荘まで7時間半くらいのコースです。もう昨年のようにトレランシューズで登るような馬鹿なマネはしません。片足が500gの軽さで、かつ靴底が岩場にフィットしやすいスポルティバの Boulder X で行きました。雨でも大丈夫なゴアテックス防水加工も施された靴です。

LA SPORTIVA Boulder X
ただし1日目は調子が上がらず、たいして速くは歩けませんでした。6時間47分もかかっています。

西穂山荘からのながめ
西穂山荘からのながめ

2日目は予想どおり雨でした。全行程のなかでもっとも危険なジャンダルム・大キレット越えをしなければならないため、無理をせず早々に停滞と決めこみました。しかしやることがありません。軽量化を優先したため文庫本なども持ってきていないからです。小屋泊であれば、小屋にある本や雑誌を読めますが、テント泊ではそれうはいきません。退屈な一日となりました。夏期講習の疲れがのこっていたので、とにかく寝て、起きるたびに水出し作業をしていました。水出しというのは、テントの底からしみこんでくる雨水をハンカチで吸い取ってコッヘルに移し、溜まったら外に捨てるという作業です。これを何度もくり返していたわけです。

この日の夕食は小屋で食べました。2,200円です。おかわりをしまくって、翌日のハード登山に備えました。同じテーブルに「日本海まで行く」と言っていた人がいました。山に慣れていない風だったので、たどりつけたかちょっと疑問です。テント場にも同様の人がいましたが、その人は20日間もの日程を取っていました。もしかしたら今もまだ歩いているかもしれません。

3日目の予定は、地図上のコースタイムが16時間を越えるものでした。これを12時間以内に歩ききれたら、この先の見通しが明るくなります。3時起床で出発しました。雨は上がっていましたが、陽が昇るまでは岩も濡れており、西穂高岳から奥穂高岳までの間はかなりスリリングでした。通称ジャンダルムと呼ばれる区間です。

西穂・奥補間
○印をたどって進みます。

ジャンダルム
ジャンダルムの頂上

すれ違う人は一人もおらず、やはりみな危険を回避したようでした。僕自身も足を岩にぶつけたり転んだりして、あちこち傷を負いながら穂高岳山荘にたどり着きました。お湯を沸かしてカフェラテを作りながら、売店が開くのを待ち、10時の開店と同時に大盛りカレーライスを注文しました。

大盛りカレーライス
周囲のお客さんがくつろぐ中、これから大キレット越えをしようとしている僕一人だけが殺気立っていました。

大キレット
いわゆるナイフリッジ。左も右も切れ落ちてます。

出発から10時間20分後、予定の南岳小屋に到着しました。コースタイムの6割ほどの短時間で歩ききることができました。危険な岩場でも突進していったせいでしょうね。南岳小屋は親切な小屋で、テント泊の客でも小屋内で自炊できたり、セルフサービスの飲み物が200円で売られたりしていて良心的でした。大キレットで追い抜いた神奈川県のKさんとは、道を教えたことで親しくなりました。消灯時間まで小屋で話しこんでしまい、コーヒーをごちそうになりました。