夏の終わりの大和路(3)

僕の家にはテレビがないのですが、ちょうど奈良のホテルで、
総選挙の開票速報を見ることができました。
歴史に残る選挙でしたので、ついつい深夜まで見てしまいました。
選挙権がなくて参加できなかった人は残念でしたね。

その翌日に、最初に向かったのは法隆寺でした。
小学校の修学旅行で行ったはずが、何一つ覚えておらず、
ちょっと空しくなってしまいました。
まあ興味がないとそんなものかもしれませんね。
今なら、入試で得た知識がだいぶありますし、
この目で見て確かめてみたいものもいろいろあります。

法隆寺中門と五重塔

実際、金堂の中にいらっしゃったお寺の方から、
たくさん話をうかがうことができました。
1949年の金堂の火災の話は非常に興味深かったです。
お寺の人たちのあいだには、焼損してしまった壁画のことを、
「意外と味があってイイ」なんて声もあるそうです。
なるほどなあと頷かされました。

それから、ちょっと笑えたのは、
法隆寺再建説に否定的だったことです。
607年に建立された法隆寺は、
670年に全焼したと『日本書紀』に記されています。
このため、今の法隆寺は再建したものだという説があるのです。
元の法隆寺らしき伽藍跡の若草伽藍跡も見つかっているほどです。
僕は空気を読んでその話はしなかったのですが、
横から別の観光客が、
「これって再建したんですよね?」と質問しちゃったのです。
すると「そういう説もありますけどね」とサラッと流していました。
そしてその後も、
「この金堂の扉は檜の一枚板で、607年の建立からこのまんまです。」
と説明なさっていました。
再建したとしても、もう十分古いんですけどね。

法隆寺五重塔と金堂

しかし、この法隆寺でもっともインパクトが強かったのは、
拝観券をチェックしている係の人でした。
神妙な面持ちで写真集らしきものを読んでいたのです。
表紙に「ASUKA」というタイトルが見えました。
「なるほど! 外国人に説明できるように勉強してるんだ。
 たしかに来年は、外人客も増えるかもしれないからなあ。」
などと感心して、また五重塔を連写したのです。
でも、もう一度振り返って見てみると、
表紙は大自然の写真で、タイトルも「ASUKA」じゃなく、
「ALASKA」ってなってたんですよ!
なんと係のおじさんは、
アラスカの旅行パンフレットを読んでいたのでした。
日本文化にどっぷり浸かっていると、
アラスカに憧れたりするものなのでしょうか?
「隣の芝生は青い」ってヤツですか。
「ないものねだり」ってヤツですか。
いや、そもそもここは関西なので、
あれはギャグだったのかもしれませんね。
ってことは、僕はつっこまなければならなかったのでしょうか?
うーむ、自分の不甲斐なさを反省しなければなりません。
関西ではツッコミそびれると怒られるそうですから。