土鍋奮戦記

土鍋にはだいぶ苦戦させられました。

土鍋用の耐火粘土は保水力が高くフニャフニャになりがちで、手ろくろで成形しているとへたってしまうのです。慣れるまでだいぶ時間がかかりました。
次につまづいたのがフタでした。本体にフタを受ける凹みをつけたせいでミリ単位の径合わせが必要となり、しかもフタの端が水平じゃないとかみ合いません。某先生からは「そういうのは電動ロクロでやる仕事だよ」とたしなめられました。僕が作ったものはすべて手ろくろなんですよね……。仕方がないので素焼後にサンドペーパーでフタをやすって合わせました。

そうして本焼きしたところ窯から出てきたものは釉薬がブクブクに膨れていたり、フタの釉薬が流れて本体とくっついていたりして、約20個のうち4つしか成功しませんでした。それが1月のことです。そこに父の急死が重なりさすがに心が折れました。

しかし年賀状で「土鍋に挑戦中!」と表明してしまっていたため「このまま引き下がるわけにはいかない!」と、もう一度奮起しました。それでもやっぱりスムーズにはいかず、今度は釉薬が剥がれたりしていくつも焼き直しを迫られました。そうしてようやく完成したのが今回出品する25点です。

実はその後もデパート側から「土鍋をしまう箱をつけなさい」と言われ、まだまだ難関は続いたのでした。サイズがバラバラな土鍋にどうやってダンボール箱を用意するのか。もうトラウマになりそうです。

手前から 金彩黒箸置(岩)2個 1,320円、鼠伊羅保飯碗 3,520円、粉引焼締め盃 3,850円、鉄釉土鍋 5,500円、赤伊羅保角皿(中) 2,640円、志野釉碗 6,600円

《石黒拡親 作陶展-うつわの冬じたく-》
11月24日(木)~11月29日(火)
※最終日は午後3時閉場
京王百貨店新宿店6階 茶室「京翔」
全日在廊しています。