昨日に続き、先月の山行記録の抜粋版です。完全版はFacebookでどうぞ。
雷雨と寒さの恐怖は、トラウマになりました。登山を再開する気力も衰えたため下界で2泊し、8月25日からようやく登り出しました。と言ってもこの日は、扇沢から1時間登っただけです。大沢小屋のテント場に泊まりました。ここで、トレイルランをやっている大原さんと知り合えたのが、唯一の救いでした。来年、日本海から太平洋まで走りきる、トランスジャパンアルプスレースに出ようとしている人です。
8月26日、この日は今回の山行中、最高の一日になりました。3日前に下った雪渓をもう一度登り直しました。
稜線に上がると全方位が見わたせました。大原さんに教えてもらい、復活したiPhoneでパノラマ写真を撮りました。
この日は種池山荘のテント場に泊まり、73歳のおじいさんから山の話をたくさん聞きました。山のベテランと話すのは楽しいものです。
翌日はくもったり晴れたりの一日で、幻想的な剱岳を見ることができました。
鹿島槍ヶ岳の頂上は気持ちよく晴れていたので、映像を撮ってみました。
(携帯でごらんの方はこちらからどうぞ。)
8月28日は一日中くもりで、見通しのきかないガスの中を歩かされました。白馬岳のテント場には強風が吹いていたので、テントの周囲を石垣で囲いました。「石垣テント」いや、「石塁テント」のほうが語感がいいですね。
夜には風がおさまり、空も晴れわたって満天の星空をながめることができました。翌朝、月明かりのなか白馬岳に登ると、なんと夜中の2時から三脚を立てて写真を撮っている人がいました。見せてもらったら、そこにはみごとな星空が写っていました。その木村さんに撮ってもらった写真がこれです。
この日もすばらしい一日になりました。白馬岳から朝日岳に向かうルートには、まだ朝早かったせいか誰もおらず、起伏の少ないやわらかい山が広がっていました。
絵本の風景のようじゃありませんか? これは朝日小屋で、ここのテント場に泊まりました。
その楽しい山行が暗転したのは夜中でした。目が覚めるとテントが強風でかしいでおり、今にもポールが折れそうになっています。テントの綱を張り直しましたが、どうにもなりません。ギイギイと音がうるさく、眠れないまま目を閉じていました。天気予報では「雨」だったので、降り始めないうちに動こうと、3時に起きて4時には出発しました。歩き出すとまもなく雨がふり出し、月明かりもない暗闇を歩くことになりました。
森林限界を越えるとそこは暴風でした。ちょうど1週間前の雷雨のときよりも強く、まさに横なぐりの雨です。正面から直撃をくらったら倒れるほどでした。そこで、背中のザックに雨風が当たるように後ろ向きで歩いたりもしました。こんな歩き方ではなかなか先に進めません。暗澹たる気分になってきました。そのときふと、あるおばさんが「明日は朝日岳から蓮華温泉に下るのよ」と言っていたのを思い出しました。そのルートなら今日中に下山できます。しかも温泉が待っています。
蓮華温泉への分岐点にたどり着くと、ザックをおろしてしゃがみ込み、30分も悩んだ末、背中にバチバチ当たる雨粒に心が折れ、海まで行くのを断念しました。蓮華温泉までのルートも決して短くないのですが、下れば森が風を防いでくれます。体がずぶ濡れでも温泉に入れます。無人小屋に泊まるのとは雲泥の差です。
しかし、蓮華温泉からタクシーに相乗りさせてもらえて喜んでいたら、途中でトンネル事故に巻き込まれ、通行止めになってしまったのです。大雨のせいで電車も運休していました。とことんツイてません。誰もいない無人駅で待ちつづけ、ようやく動き出した電車に乗りました。こうして2週間にわたる縦走が終わったのです。
この日は気分がへこみすぎていて、一枚も写真を撮っていません。そして帰宅後に撮ったものがこれです。
手袋は2組とも破れ、靴のつま先は無残にも剥がれています。ポールは最終日に転んだ際に折れました。みごとな惨敗ぶりでしょう。
このリベンジはいつ果たせるのでしょうか……。