高校2年生のお母さんからのご相談

保護者の方からメールをいただくことは、まれにあるのですが、今回は、かなり本気のご相談でした。僕も思わず、地下鉄東西線で没頭して返信メールを書いてしまいました。もし、お近くに高校1・2年生の日本史受験生がいたら、役に立つ話だと思うので、よかったら教えてあげてください。

<Yさん>
S高校2年に在籍している息子の母親です。高校生にもなって、親の私が質問してもいいものなのか、少々ためらいもあったのですが、相談メールをさせていただくことにしました。

前置きが少々長くなって申し訳ありませんが、実は今の息子の勉強状況を見ていると、あまりにも自分に甘く、このままでは浪人は免れられないように思えてなりません。そこで高3の春から講習を受けさせるのでは、もはや手遅れではという危機感をいだいた為、まずは冬期講習を受けさせて、息子に受験勉強の仕方を学ばせた方が良いのではという結論に夫婦で達しました。

今の状況ではあまりに無謀なのですが、本人は慶應の法学部を第一志望としているようです。ただ日本史は好きなようで、学校の成績も日本史だけは常にいいのですが、とはいえ、いざ受験勉強となると、彼自身どうしていいのかわからないのが現状のようです。そこで、冬から講習を受けさせてもらえるのであれば、ぜひ日本史も受講したいという本人からの申し出があった為、ネットで調べていたところ、先生のブログに出会いました。

お忙しい中、誠に恐縮ですが、ぜひとも先生が担当されている予備校の特徴についてご返答をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

それから、日本史の予備校選びとは別件なのですが、慶應の法学部に限らず、法学部を受験するにあたって、センター入試と一般入試のダブル受験を考えています。ところが、センター入試と一般入試では内容が違いすぎるようなので、どちらを基準に勉強を進めていくべきなのか教えていただけないでしょうか。特に、慶應や早稲田などの一般入試問題の場合、それなりの対策をしなくては合格はおぼつかないと思っていますが、そうなると、やはり一般入試を主にした対策をするほうが賢明なのでしょうか?それとも二兎追うべきではないのでしょうか?センター試験で合格できればそれに越したことはないと思っているのですが、それは甘い考えでしょうか。私としては、高2の終わりまでには少なくともセンター入試を受験できるだけの基礎を息子が固めておくべきで、高3からは一般入試を見据えた勉強に突入すべきだと思っているのですが、今の息子の状態ではそれも不可能に思えます。

かりにセンター試験で失敗した場合に、一般入試で慶應に合格するなどとということは、ありえないようにも思うのですが、先生はどのように思われますか?
長々と質問をして申し訳ありませんが、このことも併せてご返答いただけるとありがたいです。お忙しいところ申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いいたします。


<石黒>
日本史講師の石黒拡親です。メールをいただき、どうもありがとうございます。

日本史に関して言えば、今の段階で手遅れと言うことはありません。2年生の3月や、3年生の4月から、要領よく効率の良いやり方で学習を進めれば、早慶大レベルの力は十分つきます。それでも間に合わず、残念な結果になってしまうのは、

1 合格水準を把握せず学習していた
2 他教科が足を引っぱった

のどちらかです。2の方は僕の力ではなんともなりませんが、1については、合格者・不合格者の答案を分析し、かつ、入試問題をデータ化しているため、かなりノウハウを蓄積できていると自負しています。

受験勉強というのは、入試で必要な知識を、要領よく頭に定着させればいいだけのことなんですが、これが簡単そうにみえて、なかなか簡単ではありません。なぜなら、入試で必要な知識というのがわからないからです。少なすぎると合格ラインに達しないのは言うまでもありませんが、余分なことまで勉強していたら、他教科を伸ばす余裕がなくなってしまうのです。そして、知識を定着させるといっても膨大な量になるので、むやみやたらに詰め込むのでは、やがて限界がきてしまいます。しかも、単なる暗記では出来事の時期がなかなか定着しません。ところが悪いことに、そのことに初めから気づく受験生は少ないのです。結局、最後は、もがき苦しんで……撃沈です。

このあたりの、日本史受験のツボとでも言いましょうか、「どういう学習法で進めていくべきか」を、早い段階でつかむことが非常に肝心です。要領の良い生徒というのは、それをつかむのが早いのです。「見通す力」を持っているわけです。それはたぶん、受験にかぎらず、今後の人生で必要な力だと思いますが。

というわけで、

> まずは冬期講習を受けさせて、息子に受験勉強の仕方を学ばせた方が良いのではという結論に夫婦で達しました。
このお考えは、まさにその通りだと思います。そこで宣伝させていただきますと、早稲田予備校で高校2年生向けの講座があります。3日間で、古墳時代、奈良時代、室町時代を講義するもので、日本史学習の概観をつかむにはもってこいの講座です。時間も料金もそんなにかからないので、気軽な気持ちで受講されてみてはいかがでしょうか。

3年生になったらどうするかは、その授業を受けてみたところでお考えになるとよいかと思います。

> ところが、センター入試と一般入試では内容が違いすぎるようなので、どちらを基準に勉強を進めていくべきなのか教えていただけないでしょうか。
これは当然、一般入試を基準にすべきです。なぜなら、難関大のセンター試験利用の入試は合格者枠が少ないため、相当な高得点を取らなければならないからです。なので、普通は、早慶大レベルを第1志望とする受験生が、明治・中央・法政・立教などのレベルに、センター利用で合格するという感じです。センター試験の日本史は、基本的には難関大の学習をしていればカバーできます。ただ、難関大の学習をする際に、「単語量を増やすことだけを重視していると、センター試験で足下をすくわれる」というわけなんです。実際には、早慶大レベルをめざす受験生たちは、両方を視野において学習している人がほとんどです。

> センター試験で合格できればそれに越したことはないと思っているのですが、それは甘い考えでしょうか。
上記の通り、センター試験だけで早慶大レベルを狙うのは非常に危険です。同様に、AO入試や9月入試なども、あくまでも亜流だと思います。近道をさぐることは大切ですが、そのせいで本命のための準備がおろそかになってしまったら、本末転倒です。また、「高2の終わりまでにセンター入試の基礎を固めておく」という話ですが、正直なところ、そんな簡単にはできないと思います。たとえば、早慶大に合格する受験生でも、センター試験の日本史では8割取れないことがあるほどですから。現段階では、日本史以外の英国中心に力をつけることを重視して、3年生になってから予備校で「受験日本史」に本格的に取り組む、というやり方がベストだと思います。

> かりにセンター試験で失敗した場合に、一般入試で慶應に合格するなどとということは、ありえないようにも思うのですが、先生はどのように思われますか?
ありえます。というか前述のとおり、むしろそれが普通です。

長々と書きましたが、あまり気を揉んでも、焦るばかりでもったいないと思います。高校2年生の段階では、日本史を軽く触れておいて3年生の本番に備えるのがベストです。一方で、英語・国語はこの時期から着実に力をつけていくべきだと思います。