『2時間でおさらいできる戦国史』から抜粋

山の話ばかり書いていたら、これまた古い別のスタッフから、「やりたい放題ですね。ブログがどこに向かっているのかわかりません」とツッコまれました。厳しいスタッフばかりで気苦労が絶えません。
一応、文章が長いのと検索などで外から見にくる人のことを考えて、アップする場所をブログにしたのですが、やはり山の話はフェイスブックに書くべきでしたか。すみません。

さて今日は、月曜日から書店に並び始めた『2時間でおさらいできる戦国史』から、「はじめに」の部分を紹介します。

 戦国時代は人によって好き嫌いが分かれる時代です。嫌いな人からは「似たような名前ばかりでゴチャゴチャする」とか、「あちこちで戦いばかりおこっていてイヤ」と聞きます。たしかに戦国時代の本を読んでいると、私自身も人物関係がわからなくなってわずらわしく思うことがしばしばです。
 そこで、登場回数の少ない脇役を「おじ」や「弟」などと表し、もっと戦い以外の部分にもスポットをあてた本を書いてみたいと思いました。そうすることで人びとの本質を浮き立たせたいと考えたのです。今と変わらぬ人びとの思いにうなずく反面、当時の社会の残虐さには目を丸くするはずです。そのうえで現代を見つめ直せば、暴力が減っていることを実感できるでしょう。未来に希望さえ感じるかもしれません。
 戦国時代を学ぶことは、戦いにあけくれた時代を終わらせ、平和をつかんだ人びとを知ることでもあるのです。それは輝かしい偉業だと思いませんか?

 現在、私は予備校で日本史の講師をしています。さかのぼれば少年時代に戦国時代が好きだったことが発端です。歴史マンガから始まって、忍者、小説、城のプラモデル……と多くの戦国ファンが通る道を歩いてきました。
 ところが大学入試の日本史に携わるうちに、だんだん別の部分に目が向くようになりました。なぜなら入試では城の細かい知識やエピソードなど、まず出題されないからです。むしろ問われるのは、戦国大名の領国経営や農村社会のほうでした。そのおかげで自分の嗜好に偏ることなく、フラットに戦国時代を見わたせるようになりました。するとそこには、思いがけずおもしろい世界があったのです。
 この時代には幕府の力が地方におよびません。そのため各地で戦国大名たちがしのぎを削ってさまざまな政策をとり、また百姓たちもたくましく活動していました。「百姓」は江戸時代には農民をさしますが、それ以前は「百の姓を持つ人」つまり、農民を含む庶民のことです。公家や武士などはごく一部の存在にすぎません。大半をしめていたのは百姓なのですから、その動きを知らずに戦国時代をつかむことはできないでしょう。自分が偏っていたことに気がつきました。
 それと同時に有名なエピソードのなかに作られたものが多いこともわかってきました。私的な話で恐縮ですが、私の実家のそばに石田三成をたたえる「先祖代々碑」が建っています。碑銘には江戸時代末期に石黒豊蔵という人が建てたとあります。周囲は石黒という名字の家ばかりなので、幼少の頃には近所のおじさんから「石田三成の子孫が『石黒』と名を変えて、今のわしらにつながっとるんじゃ」と聞きました。もちろんそんなはずはありません。しかし当時の石黒少年はそれを信じ、石田三成を討った徳川家康を仇のように思っていました。これも作られた物語の一つでしょう。

 近年、戦国時代の研究が急速に進んだおかげで、さまざまな事実が明らかになっています。本書ではそれらをふまえて戦国時代を見わたしてみたいと思います。細かい人名や年代などにはこだわらず、できごとの流れや人びとの思い、なしたことを知ってみませんか。それで楽しんでいただけたら、これにまさる幸せはありません。

本当の戦国時代を知ってみませんか?

2時間でおさらいできる日本史