※このシリーズは日本史受験には何も関係ありません。忙しい受験生は写真だけ見て癒やされてください。
3日目は宮之浦岳に登ってきました。
昨夏捻挫した右足首はちょっとしたダメージにも弱くて困ります。前日トロッコ道を走ったせいかやや痛みがあり、強めのテーピングとサポーターを巻いて挑みました。
選んだのは淀川口から山頂をピストンする一番近いコースです。地図上のコースタイムは10時間越えと長かったので、真っ暗なうちからレンタカーを飛ばしました。登山口まではうねうねと曲がりくねった舗装道路が1時間弱も続きます。7時くらいに着くとすでに車が2台あって、身支度をしていたら1台から外国人が出てきてびっくりしました。若いカナダ人男性でした。
明るくなった7時半に出発。すると一足先にガシガシ登って行ったカナダ人が「お水、ワスレマシタ-」と言いながら駆け下りてきました。「おみず」なんて丁寧語をよく使いこなすものだなあと、後から笑いがこみ上げました。
天気予報ではお昼くらいからは晴れるということでしたが、そんな気配はみじんもありません。厚い雲のせいであたりは暗く、強風の上に雨がパラついていました。
光が差すのは気まぐれにガスが切れた一瞬だけです。水たまりをじゃぶじゃぶ歩かされることもしばしばで、そんな悪路なのにランニングシューズで降りてくる男性二人とすれ違いました。もしやと思って聞いてみると、予想どおり前日に行われた屋久島一周レースの参加者でした。100kmも走った翌日だというのに夜明け前から登山なんて、もう変人以外の何者でもありません。
そのまま登り続けるとカナダ人の若者が早くも降りてきました。トレランの人たちのスピードにはほんと舌を巻きます。しかしこれでもう山にいるのは僕一人となってしまいました。登山口にはクルマ以外のアクセスはないので、あそこに止まっていたクルマが登山者すべてなのです。また捻挫でもしたらヤバイです。慎重に進まなければなりません。ところが森林限界を超えてからは強風に見舞われ、何度もうらめしく空を仰ぎ見ました。
山頂に着いても相変わらずガスで何も見えません。屋久杉自然館で見た映像では、山頂周辺に変わった形の巨石がいくつもあって絶景のはずです。このまま帰るのは惜しいと宿でもらったお弁当を食べながら待ちました。しかしおにぎりは冷え切っており、そこに冷たい水では体が冷える一方です。半分だけ食べてあきらめました。最後に山頂写真を撮って下山しようとしたちょうどその時、岩陰から男性が現れ驚きました。思わず「うぉっ」と声が漏れてしまいました。地元のTさんという方で、さっそく写真を撮ってもらいました。
ここにはよく来られるそうで、山頂をこえたところにある祠に案内していただきました。もっともそこは突風が直撃する場所で、岩を這って進むのがやっとでした。後で聞いたら風速20~30mだったそうです。
さすがに信仰心の乏しい僕でも手を合わせる気持ちになりました。日本にあるこうした厳しい山はほとんどが信仰の対象となっています。ここからちょっと下ったところの栗生岳(くりおだけ)にもこんな祠がありました。
Tさんと別れて下山し始めると、またランナー姿の人(Oさん)が登ってきました。またもや変人です。なんと縄文杉を見に行った翌日に屋久島を一周し、その翌日にここに来たというのです。全身ずぶ濡れで、そのワイルドさというかタフさにはあんぐりさせられました。その後、抜きつ抜かれつしながらトレランについて質問攻めをしてしまいました。翌日も鹿児島空港で一緒に食事をして、またまたトレラン講習をしていただきました。
それにしてもこの宮之浦岳は九州最高峰の山とあって、高度によっていろんな姿を見せてくれます。花之江河はこんな湿原となっています。
ありがたいのは水があちこちに湧き出していることです。小さなペットボトルがあれば水には困りません。あのカナダ人も水を取りに戻る必要なんてなかったのです。そして川も思いっきり澄んでいます。
下山後に一息ついていたらTさんが降りてきました。するとトイレの裏側に樹齢三千年クラスの屋久杉があると言うのです。幹の太さがわかるでしょうか。
見上げるとこんな感じです。
実はTさんはこの道のプロで、屋久杉はもちろん屋久島の自然についても熟知している方でした。いやはやそんな方から直々に個別指導していただき、大変ありがたい登山となりました。Tさんからは屋久島の見どころ・穴場・お薦めスポットもお教えいただいたので、次回はそれらを満喫するつもりです。
ちなみにここには翌日も訪れることになりました。ストックを忘れてきてしまったからです。最近は山に行くたびに何かを忘れてくるようになって困っています。