受験生にみる、二つのマインドセット

先日『「やればできる!」の研究—能力を開花させるマインドセットの力』(キャロル S.ドゥエック著)という本を読みました。このなかで著者は、人を次の二つのタイプに分けて論じています。

 (1)自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらない、
   と信じている「こちこちマインドセット」の人

 (2)人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができる、
   と信じている「しなやかマインドセット」の人

そんな単純に二分することなどできないわけですが、それでも20年も受験生を見ていると似たようなことを思います。「カチカチアタマの受験生」と「やわらかあたまの受験生」です。それは授業を聴く態度に表れます。「カチカチアタマの受験生」は、どこかで習った知識があるせいか、授業を聴こうとする姿勢に欠けます。授業で理解して成績を伸ばそうという意欲も感じられません。「やわらかあたまの受験生」との差は、込み入った内容の話になったときにはいっそう際立ちます。理解することを放棄してしまったりするのです。なんて書いているうちに、かつて出会った「カチカチアタマの受験生」の顔が、何人も思い浮かんできました。

そうした人たちは、勉強法を柔軟に変えることも苦手なようです。理解することが苦手なせいか、「日本史なんて暗記すればいいんだろ」と考えているようにも見えます。

この本で興味深かったのは次の部分です。

マインドセットの違いは脳波にも現れる。両方のマインドセットの人たちに、コロンビア大学の脳波実験室に来てもらった。難しい問題に答えさせ、それが正解か否かを知らせて、どのようなときに興味や注意が喚起されたことを示す脳波が現れるかを調べた。
こちこちマインドセットの人たちの関心が高まるのは、「あなたは正解です」と言われたときだった。答えが正解か否かを告げられる瞬間に最大の注意が払われることが、脳波から明らかになった。
一方、学習に役立つ情報が提示されても興味を示す気配はみられなかった。答えが間違っていたときでさえ、正しい答えを知ることに興味を示さなかったのである。
知識を広げてくれる情報にしっかりと注意を向け、学習に重きを置いているのはしなやかなマインドセットの人たちだけだった。

これも実に思いあたる話です。というのは、早慶大向けのハイレベル問題を解説する際に同じようなことがおこるのです。解説に入る前に正解をまとめて言うと、丸付けをしただけで脱力している人がいるのです。解説こそ聴くべきところだと言うのに! そのいっぽうで込み入った解説を聴いて、ニヤニヤしている人もいます。きっと正解へのプロセスが、僕と同じだった人なのでしょう。

「日本史道場」では、考えて解く問題をたくさん解説します。難関大に受かる頭をつくっていきましょう。

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