早稲田法学部の割れる解答速報

先日の早稲田法学部の問題の解答速報についてのやりとりは、
一部の読者にウケてもらえたようで何よりです。
その後I君からはこんなメールをいただきました。
「各予備校で答えがわれているようで、非常に難問だったようです。
 もぅ多くは言いませんが、
 石黒先生ももう一度よく調べ直すことをお勧めします。」
そこでさらに考えを推し進めて、サイトに講評を載せました
ここに転載しますね。

 問4・6はどう考えるかで解答が割れる問題であった。
 代銭納は農民が銭を納めることと勘違いしている人が多いが、
 農民が納めた米を荘官や地頭が換金し、
 為替を利用するなどして領主に納めることである。
 また貫高制は、土地の大きさを、
 銭による年貢収納額で表すしくみなので、
 銭納との深い関わりがあった。

と、そこへまた別の方から質問メールをいただきました。

<Sさん>
こんばんは。いつも石黒先生のブログを楽しく読ませていただいてます。石黒先生に習ったことはなく、普段は駿台で授業を受けているのですが、ブログを読んでいるうちに、石黒先生の授業にとても興味を持つようになり、浪人したら是非その元で教えていただきたいと思っております。
本題なのですが、2月17日のエントリーの件なのですが、先生の解説を読んで私も早稲田の法の問題を解いてみました。私も問4の選択肢を お にしてしまいました。先生のおっしゃられるように、私も貫高制を一面的な理解しかしておらず、おは消去してしまいましたが、うを選んだ根拠もあります。「現物納が銭納よりも有利だった」という文章を読んで、私はこの時代における貨幣経済の浸透について考えました。
この貨幣経済の浸透により、武士は米→貨幣に変える過程において商人にその主導権を握られることでその窮乏化を招いた、と考えていました。同様に農民にも自分の収穫を貨幣に換える過程で不利が発生するのではないか、と考えた次第です。ご指摘よろしくお願いいたします。

<石黒>
derutokoサイトの解答速報ページには、講評も載せているのですが、
「代銭納は農民が銭を納めることと勘違いしている人が多いが、
 農民が納めた米を荘官や地頭が換金し、
 為替を利用するなどして領主に納めることである。」
と書きました。
どう思いますか?
先日のブログの記事とは別の切り口から説明したつもりです。
要するに代銭納になったと言っても、
農民が納めるものは米で変わっていないのです。
このことを勘違いしている人が多い点を突いた問題だった
とも思うのです。

<Sさん>
お返事ありがとうございます。申し訳ありません。そのページは読んでいませんでした。たぶん私はその情報を知っていても荘官や地頭が米→貨幣にする過程で不利があれば、その不利は農民にも振りかかってしまうのではないか。と考えてしまいそうです。自分で気づいたのですが、換金する過程が不利である前提であることが問題があるのかなとも思います。何はともあれまた日本史の新しい視点を気づかせていただけました。ありがとうございました。

<石黒>
現物納と違って銭納ならば、為替を利用した年貢納入ができるので、
荘園領主への輸送という観点から考えると、
必ずしも荘官が不利とはかぎらないと思います。
また本当にそんなに不利だったのなら、
現物納に戻せばいいと思いませんか?

<Sさん>
お返事ありがとうございます。確かにそうですね。輸送という観点はありませんでした。現物納に戻す、という考え方も「農民が納めた米を荘官や地頭が換金し、為替を利用するなどして領主に納めることである。」という事実を知らなければ思い浮かばない推測だと思います。農民にそんな選択権があるとは思えないので。納得できました。貫高制の理解不足も正解へ辿り着けない理由だと思います。ありがとうございました。私は立教、明治に受かってしまっていて、残りは早稲田と、慶應の発表待ちで、経済的な理由で早慶を目指すための浪人はできないので、先生の授業は一生受けられそうにありません。なので今日日本史に関する質問ができたこと大変うれしく思っています。

この問題は結局、代ゼミと僕が「う」を、
河合・駿台・東進が「お」を正答としました。
みなさんはどう思われますか?