続・夏休みに目覚める人たち(1)

夏期講習中に目覚めた人たちを
このブログで何人か紹介しましたが、
彼らはその後、どうなったでしょうか?
やる気やモチベーションの維持というのは、なかなか難しいもので、
一度奮起しても、結局挫折してしまう人を
何人も見てきたため、非常に気がかりなところです。
以前にこちらで紹介したI君は、先日
さっそく早稲田予備校に授業を受けに来てくれたのですが、
その後、こんなやりとりがありました。

<Iさん>
今日ワセヨビで石黒先生の授業を受けました、Iです。早速今後の授業を申し込みました。これからよろしくお願い致します。その手続きがあって先生に質問に行けなかったのですが、太閤検地について質問です。
“一番初めの太閤検地”は”1582年の山城国”だとある本に書いてあったのですが、一学期の××予備校の○○先生の授業では、山城国の検地は指出検地だと習いました。「太閤」とは”関白とか太政大臣を辞めた人に対する中国風の称号”と参考書には載っていましたので、豊臣秀吉の太政大臣辞任は1591年であることを考えると、山城国の検地は太閤検地でいいのか疑問が残ってしまいます。
もう一つですが、最も古い分国法は朝倉孝景条々ですよね?○○先生の授業で相良氏法度が最古だと習ったのですが…。
夏期講習での分国法の問題についてもう1つ伺いたいことがあるのですが、そちらは長くなりそうなので来週質問させてください。
今日は授業ありがとうございました。では失礼します。

<石黒>
I君、通年授業を受講してくれるそうで、
どうもありがとうございます。

さて、太閤検地についてですが、
「山城国の検地は指出検地だ」という学説があるのかもしれませんが、
それは大学受験の日本史のための知識ではありません。
普通に太閤検地だと考えてください。
太政大臣の辞任なども考える必要はありません。
そんなこと言い出したら、
豊臣姓をもらった時期まで考える必要が出てきてしまいます。
羽柴秀吉なんて用語を答えさせる大学は普通ありませんよ。
秀吉が行った検地を太閤検地と言うのだと理解しておいてください。

分国法についても、朝倉氏と覚えておいてください。
たぶん○○先生は
「朝倉孝景十七箇条は分国法ではなく家訓だから、分国法で最も古いものは相良氏法度だ」
と主張なさっているんだと思いますが、
大学入試にふさわしい知識ではありません。
何しろ、2001年早稲田大では、選択問題で
「次の分国法のうち最も早い時期のものは何か」
と出題しているのですから。
選択肢は、
ア六角氏式目 イ結城氏新法度 ウ塵芥集 エ朝倉孝景十七箇条
です。
朝倉孝景十七箇条も
分国法ととらえてしまって良いことがわかると思います。

教科書の記述や歴史学の正しい知識を学ぶことも大切ですが、
受験生にとってもっとも重要なのは、
大学受験に必要な知識をポイントをつかんで得ることです。
これを氷山の一角だととらえて、
他にもそうしたことがあるのだと推測してください。

<Iさん>
返事が遅れてしまい申し訳ありません。実は土曜日から文化祭だったんです。太閤検地・分国法、共にスッキリしました。ありがとうございます。ブログにも是非載せてください。
石黒先生とは直接では関係のないことかもしれないのですが、今度の河合塾のテーマ別講座について質問です。文化史については先生のご推奨に従って文化史の映像教材のお試し版を購入しようと思っています。そこで、河合塾の経済史の講座は受講するべきでしょうか。一学期の範囲についてはもう一度自学でやり直しているので、こういう授業には必要性を感じるのですが…。石黒先生の担当講座でないことは承知しているのですが、先生の考えを聞かせて欲しいです。

<石黒>
河合塾の経済史の講座については、
担当される先生によって授業内容にバラつきがありますので、
僕の方では何ともわかりかねます。
ただ一つ言えることは、
このあいだの太閤検地や分国法の件からもわかる通り、
入試の出題ポイントをついた勉強をしなければ
意味がないということです。
残念ながら、学校や予備校の先生すべてが、
そうした授業をされているわけではないのです。
どうしても不安で受講したいということでしたら、
その点をふまえて授業に臨んでください。

<Iさん>
忙しい中いつも丁寧なお返事ありがとうございます。結論の前に話が変わりますが、夏休み、学校の夏期講習として、他校の先生や○○予備校の先生の日本史のテーマ授業を受ける機会がありました。そこで感じたのは、”先生に対する信頼感”が授業の吸収力に影響するということでした。石黒先生の授業や教材には絶大な信用をしているので吸収も良いのですが、他の先生だと”今先生が話していることは、本当に重要なポイントなのだろうか?”という疑念(というと失礼なのですが...)が授業中・復習におけるモチベーションに悪影響を感じました。こういった点からも、経済史の授業はよほど必要性を感じることがあれば、受講することにしたいと思います。ありがとうございました。それでは失礼します。

※編注:都合により、文章の一部を伏せさせていただきました。

受験で出題されるポイントを、効率良く覚える
というスタイルに、早く慣れていってほしいものです。
明日も、同じテーマでお伝えします。