タイトル発表! 新作問題集

先日、南千住を歩いていたら、回向院(えこういん)という寺院の前を通りかかったんです。そのあたりは江戸時代は小塚原(こづかっぱら)の刑場があったところで、20万人もの刑死者が埋葬されたんだそうです。そして、回向院には吉田松陰や橋本左内の墓がありました。吉田松陰の骨は今はないとのことでしたが、安政の大獄で処罰された人たちだけでなく、桜田門外の変や坂下門外の変の事件を起こした人たちの墓が並んでいました。厳粛な気持ちになりながら手を合わせましたが、お墓の写真はとても撮る気にはなれませんでした。

ところで、ここは杉田玄白や前野良沢たちが、腑分け、すなわち人体解剖を見た場所でもあるわけです。この時の衝撃をきっかけに、彼らは『ターヘル・アナトミア』の翻訳に乗り出すわけですが、それはそれは、「誠に艫(ろ)・舵(かじ)なき船の大海に乗出(のりいだ)せしが如く」大変な作業だったわけです。回向院の壁にはこんなレリーフもありました。

回向院

回向院を後にして、しんみりした気持ちで南千住駅に向かい、地下鉄日比谷線に乗り込みました。

そして、ひらめいたんです。

「日本史事始! にほんしことはじめでいこう!」と。

卒業生のみなさんならわかるでしょう。杉田玄白のアレ、です。初心者の方に説明しましょう。玄白は『解体新書』の翻訳作業の苦心談を、晩年になって『蘭学事始(らんがくことはじめ)』という本に著したのです。

実は、その日は朝から新しい問題集のタイトルを考えていて、「最初に取り組む問題集だから、『はじめ』って入れたいなあ」と、ずっと思っていたのです。ちょうどそこに杉田玄白先生が現れてしまったんです。このタイトルを思いつかない方が不思議なくらいですよね。

「にほんしことはじめ、にほんしことはじめ……」と何度かつぶやいて、新しい言葉がなじむかどうか確かめました。みなさん、どうですか?その時の僕は「これはいいぞ」と感じ始め、もう無我夢中状態で、すぐに表紙のデザインを考え始め、気づいたら乗換駅を2駅も乗り過ごしていました。

そうしてできた表紙がこちらです。

事始 表表紙

これ、裏表紙につながっているんです。ほら。

事始 裏表紙

買ってくださった方は、ぜひバッと開いて見てみてください。斬新なデザインだと思いませんか?