「専修念仏」な人

10月も後半に入りましたから、焦り始めた人が多い気がしますが、
この時期によくある失敗のパターンに、こういうのがあります。

本当にやらなきゃいけないことから逃げて、別の近道がないかと探し出す。

新しい参考書を買ってみたり、
意味もなく模試の解説をまとめてみたり、
一から戻って教科書を最初から読み始めたり……。
気持ちはわからなくもないのですが、
「覚える→確認する」
これしかやるべきことはありません。
後はそれをいかに効率よくやれるか、です。
インプットする方法は様々ありますが、
僕は「まとめたものをしゃべって覚える」のが
一番速いと思っています。
そのまとめが出題データに沿っているべきなのは、
言うまでもありません。
しかし、この方法を嫌って別の方法を探す人は多いようです。
「覚えるのが苦手なんです……」ってね。
そういう人たちに言いたいのですが、
いくら参考書をたくさん読んだとしても、
もしくは、ストーリーを理解したとしても、
はたまた、用語の意味を詳しく知ったとしても、
それがどの時期のどういう分野のことで、
他の用語とどう連関しているかがわかっていなければアウトですよ。
逆に、以前にも書きましたが
用語集や辞書レベルの精密な知識がなくても、
時期・分野・連関がわかっていれば、正解できる問題は多いです。
だったら、
まとめをわしづかんで覚えてしまえばそれで終わりなんです。
そうしてインプットができたら、後は問題を解いて確認してください。
その際には、自分が受験する大学の問題が解けるかどうかが、
もっとも肝心なところですから、当然過去問が重要です。
その一方で、普通の問題集も解く必要があるでしょう。
なぜなら、来年の入試で出題される問題が、
まさか過去問だけで構成されるわけないんですから。

一つ例を挙げましょう。2007年学習院大経済学部の問題です。
江戸時代の話です。

佐渡の沢根の廻船問屋には、手船を用いて上方(兵庫・大坂)で綿や塩を買入れ、これを酒田や松前に運んで販売し、松前で昆布などの海産物を積入れて上方に運び売りさばいて利益をあげた船主がいた。

問 これについて、自分の船で自己資本で商品を売買して巨利を得た船を何と呼ぶか、答えなさい。

「何のことを言ってるんだろう?」って思った人いませんか?
こういう難しい説明で出題されると戸惑ってしまう問題があります。
でも、落ち着いて考えてみると答えが見えてきます。
上方と酒田・松前を結ぶ日本海側の航路は西廻り航路ですね。
そこを走ってる船で入試に出題されるのは
「北前船」しかありませんよ。
この「入試に出題されるのは……しかない」って解き方は、
まっとうな解法には見えないでしょうね。
でも、僕たち凡人受験生には、
一つ一つの用語をそこまで詳しく知る余裕などないんです。
出題される用語が「これだけ」ってわかっているなら、
その中で探して答えてしまえばいいと思いませんか?
時々「それだと新出単語に対応できない」と言う人がいますが、
そんなの100点中の10点分にも届きません。
この大学ならではの用語ってのもありますが、
それは講習や単科講座、
さらには『MARCH学習院あるあるチェック』などで拾えます。

受験生を見ているとよく思います。
大学受験の日本史がどういうものなのかつかめておらず、
そのために勉強法もわかっていない人が多いなあ……と。
ただ単に、
・一問一答集をやるだけ
・参考書を読むだけ
・問題集を解くだけ
・ノートを書き写すだけ
・歴史用語を何度も書きなぐるだけ
という、一つのことばかりやりたがっているような気がするんです。
たしかに一つのことだけをやるのは簡単ですよね。
法然の「専修念仏」が庶民にウケた理由もそこにあるでしょう。
ただひたすら「なむあみだぶつ」と唱えるだけで救われるんですから。
でもね、信仰ならともかく、現代の実生活を考えた時には、
多くのことを同時にやりこなすことができないと困りますよ。
だって、社会に出た時に職種が限られてしまいますから。
一つのことだけひたすらやる仕事っていうのは、
低賃金労働になりがちです。
芸術家だったらそうでもないかもしれませんが……。

話がそれました。
というわけで、このブログを読んでくださっているみなさんには、
わざわざ遠回りなんてせずに、
最短コースで志望大学に行ってもらいたいものです。
もちろん、回り道をすること自体は悪いわけではないのですが、
お金をいただいて指導しているので、
どうしても黙って見過ごせないわけです。