リアルな映画『この世界の片隅に』

めずらしくアニメ映画を見てきました。『この世界の片隅に』です。太平洋戦争中の広島・呉が舞台なのに「単純なお涙ちょうだいモノでもなければ、反戦を叫ぶモノでもない」との評に興味を惹かれたからです。実際見てみるとまったくその通りで、こうした淡々としたトーンのほうが観客を引きこむだろうなあと感じました。

物語にはファンタジー要素も入っているのですが、風景や生活の描写のリアルさに大変感じ入りました。テレビの実写ドラマだと背景セットや撮影機器にしばられて、リアルとはほど遠いものになりがちです。それがアニメだと「絵」という点では非リアルなのですが、どんな物体だろうがどんな視点からだろうが描くことができます。原爆投下前の「原爆ドーム」とか、人がたくさん乗っている戦艦大和とか、焼夷弾が畑や屋根に刺さる様子とか……目が充血するほど凝視してしまいました。後で知ったのですが監督の片渕須直さんは、これらをかなり調べて描いたんだそうです。真実を追究したいタイプの人には安心ですね。

僕にとってタイミングが良かったのは、ちょうど民俗学の本を読みはじめたところだったことです。そのおかげで映画の中の人びとの暮らしぶりが、「あー、こんな感じだったんだ!」といちいちうなずけました。今の生活習慣しか知らないと「え? どういうこと?」ってなる部分も多いはずです。昔を知っている人と一緒に見て教えてもらえるといいですね。

いろんなシーンがまぶたに焼きついていますが中でも一番「そうだよなー」と膝を打ったところは玉音放送のシーンでした。全編にわたってほんわかしている主人公の女性が、このときだけは激しく感情をあらわにしたのです。

受験勉強で忙しい時にこんな話を読ませてしまってすみません。受験生のみなさんはすべてが終わったらDVDなどで見てみてはいかがでしょうか。

この世界の片隅に