古代には算道という学問が学ばれていたことを知っていますか?
このブログでも何度か紹介したことがありますが、
立教大で過去に「数学の歴史」が出題されたことがあります。
その算道にまつわる質問がありました。
いつもは情報漏洩を避けるために伏せ字にしてしまうところですが、
今日はそのまま紹介します。
大変レベルの高い内容となっています。
<Kさん>
初めまして、大阪で宅浪しているKと申します。先生の教材は、映像教材以外はほとんど買わせていただきました。映像教材だけは、家にパソコンがないという理由で断念しました。お金はあるのに買えないというトホホな話です。でも先生の教材は本当に素晴らしいと思っていますので安心してください。
そして本題ですが、今日は少し分からないことがあったので石黒先生に質問させていただきます。一つは、『難関大用語集解』のP63で、平安時代には三善氏は算道などの学問の家学化が進んだと書かれているんですが、何かの問題集には「文章博士の三善なんとかは、~」と書かれていました。算博士のはずの三善さんが文章博士も掛け持ちしてたんでしょうか?それとも、単純にこの場合の三善さんは別々であると考えたら良いのでしょうか?家学化が進んでも、三善氏は絶対算博士とは限らないってことでしょうか?
そしてもう一つあるんですが、『難関大用語集解』のP151に出てくる「正平の一統」についてなんですが、あまり詳しく説明されてなかったので、受験日本史的には「正平の一統」については北畠親房の主導のもとおこった出来事ととらえておけば大丈夫でしょうか?用語集で調べてみたんですが、載っていなかったもので。二つとも些細な質問で申し訳ないです。石黒先生がだいぶ忙しいのは分かっていますので、いつでもいいので返信よろしくお願いします。夏期講習など頑張って下さい!!
<石黒>
当方の教材をいろいろ使ってくださっているようで、
ありがとうございます。
質問にお答えします。
「文章博士の三善……」というのは、
2002年早稲田大学(社会科学部)の問題ではないでしょうか。
三善清行の説明文を選ばせる問題で、正解が次の文だったのです。
「文章博士兼大学頭となり『円珍伝』や『藤原保則伝』等を書いたが,
備中介等の地方官をも経験した有能な実務家であり,
晩年に参議となった。」
確かにこれを選ぶためには、
「三善氏は算道の一族」と断定していてはいけませんね。
正確な事実としては、三善氏には複数の流れがあって、
三善為康などの算道系の官人を出した流れと、
清行らの流れは別なんだそうです。
ちなみに鎌倉幕府の三善康信は、前者に含まれるそうです。
これは難しい問題でした。
ここまで詳しく覚えている必要はないと思います。
過去の出題データから考えると、
何よりも三善氏が「算道の一族」だったと覚えるべきです。
その上で、余裕があれば例外的に
「三善清行は文章博士」と覚えるとよいでしょう。
でも正直なところ、そこまではお勧めしません。
それにしてもこの矛盾に気づくとは、
なかなかよく勉強していますね。驚きました。
次に「正平の一統」ですが、北畠親房がどうこうというより、
P.151にある内容の方が重要です。
足利尊氏が南朝に降ったため、
南朝が一時京都を占拠したというのがポイントなのです。
観応の擾乱の最中の1351年のできごとでした。
<Kさん>
質問に回答していただき、ありがとうございます。少し分からない部分を、石黒先生のおかげで分かるようになりました。本当にありがとうございます。問題も確かそのような感じだったと思います。正確に覚えていなくて申し訳ないです。三善氏は算博士と文章博士がそれぞれいることが分かって良かったです。「正平の一統」もポイントがよく分かりました。しかも、「よく勉強してる」と褒め言葉までいただきありがとうございます。テンション上がりまくりです(笑)でも、ここまでよく勉強できてるとしたら、それはすべて石黒先生の教材が凄すぎるんですよ(笑)ぜひブログで使ってください。僕と同じような疑問を持った受験生がいるなら、役立つと思います。
最後に、最初に石黒先生にメールを送る時は若干躊躇しました。こんなメールを本当に送っていいんだろうかと。でも送って良かったです。疑問が解決するとすっきりしました。今年の受験がもし終わったら、ぜひ石黒先生にお会いしたいです。何時間でも僕は喋れると思います。あっ、でも石黒先生は忙しいですから何時間も喋れませんね。すいません。では長くなってしまいましたが、お身体を大切にしてください。
この2つの内容は、予備校の通年授業ではほとんど説明していません。
しかし、三善氏が算道を家学としていたことは
『でる日講義−とことん文化史−』や、
早稲田予備校の夏期講習「日本文化史」で説明しています。
また正平の一統は、
早稲田予備校の「でるとこ日本史プラス」で説明しています。
通年授業では、集中できないのか、吸収力が足りないのか、
はたまた意志が弱いためなのか、挫折してしまう人がいて残念です。
でも、地方にはこんなに熱心な受験生がいるんですね。
お会いしたこともないですが、
当方の教材でがんばってくださっているなんて、うれしいかぎりです。
猛烈に応援していきますので、遠慮なくご質問ください。