中央大経済学部は問題をどうやって作っているか(2)

昨日の問題の後には、正誤問題がついていました。
一筋縄では解けない問題です。
解いてみてください。

問2 以下の記述のうち,この時代の農業に関する特徴を適切に表現しているものを選んで,記号で答えなさい。ただし,正解は,一つとは限りません。
(ア) 蒙古襲来の前後から,畿内や西日本では,灌漑や排水設備の整備・改善によって,米・麦・そばを一連の農作業で収穫する三毛作が行われはじめた。
(イ) 蒙古襲来の前後から,畿内や西日本一帯では,麦を裏作とする二毛作が普及していった。
(ウ) 生産力が高まるにつれ,地頭や荘官は,下人や所従を使役する農業経営から,彼らを作人として独立させて生産物を取り立てる方式に替えていった。
(エ) 農業生産性の向上は,農民を豊かにして彼らの物資への需要を高めたため,農村にも商品経済が浸透した。
(オ) この時代の農業は,中期以降大規模な開発が減少し,限られた耕地の中で農業生産力を高める集約化の方向に進んだ。

鎌倉時代の農業の特徴が問題になっています。
時代に注意しながら選択肢を見ていきましょう。
(ア)は「三毛作」が誤りですね。この段階では「二毛作」です。
要するに(イ)が正文というわけです。
(ウ)(エ)を飛ばして(オ)を見ると、これは江戸時代の話なので誤りです。
さあ悩ましいのは(ウ)と(エ)です。
どう考えましたか?
実は旺文社の『入試問題正解』と教学社のいわゆる赤本とで、
解答が割れました。
旺文社は(ウ)は誤りで、(エ)が正しいと。
赤本は逆に(ウ)は正しくて、(エ)が誤りだとしているのです。

というわけで、この正誤文がどう作られたのかを探してみたところ、
やっぱり教科書から抜き出された文章だったのです。

(ウ) 生産力が高まるにつれ,地頭や荘官は,下人や所従を使役する農業経営から,彼らを作人として独立させて生産物を取り立てる方式に替えていった。
  ↓
生産力が高まるにつれて,地頭や荘官は,直営地で下人・所従を使役する農業経営を改めて,彼らを作人として独立させて生産物をとりたてる方式にかえていった。
(清水書院の教科書『詳解日本史B』より)

(エ) 農業生産性の向上は、農民を豊かにして彼らの物資への需要を高めたため、農村にも商品経済が浸透した。
  ↓
このような生産性の向上は農民を豊かにし,物資の需要を高め,農村にもしだいに商品経済が浸透していった。
(山川出版の教科書『詳説日本史』より)

そして、(エ)の方は室町時代のところに書いてある文章でした。
なかなか難しい問題でしたが、見破れたでしょうか?
通年授業を受けている人は、
14番ページに「生産力の向上」とあるのを思い出して、
なんとか解いてほしいところです。

今回はかなりマニアックな話になってしまいました。