どのコースが近道か

地方の独学受験生や、たとえ予備校に通っていても、入試の出題分析をしていない先生の受講生の場合、志望大学の問題水準と大幅にずれた勉強をしていることがあります。最悪の場合、そのまま気づかずに入試を迎えてしまうわけですが、その様子は、わかっている人から見れば、もう、

なんでそんなこと知らないの!?

って感じなんです。もう11月下旬ですから、現在そういう状況に置かれている受験生にとっては、間に合うかどうかの瀬戸際なわけですけれど、事実は事実なので隠してもしょうがないところです。

地方の方から最近こんなメールをいただきました。

<Xさん>
こんにちわ。ちょっと、悩んでることがあってメールさせてもらいました。
つな近を購入させてもらい、順調に進めれてます。そこで、「文化史もやらなくてはいけない」っと思いました。出題も多いみたいで、ここを避けては早稲田には入れないのかなぁ~と思いました。そこで、石黒先生のとことん文化史をやろうと思ったのですが、770分ってことを考えるとちょっと躊躇してしまいました・・・。今から初めてちゃんと入試までにできるのかなと。問題集で気合で丸暗記?っていうのもアリかなぁ~とか思うんですけど、また的はずれ勉強となるのは怖いです。770分やった後に復習をしまくって、定着ってことを考えるとちょっと時間的に大丈夫かなぁと思ってしまいます。
そこで、石黒先生に質問です。この今の状況を考えると、とことん文化史をやるべきなのか、問題集とかで気合でやっちゃうのとはどっちがいいのでしょうか?自分がちゃんとしてなかったせいで、こんなことになってしまったのに石黒先生に頼りっぱなしで申し訳ない限りです。

<石黒>
少しキツイかもしれませんが、思ったことをそのまま書きます。
正直なところ、あらゆる点で驚いたメールでした。まず文化史をやらずに早稲田に受かろうとしていたってことは、英語・国語でカバーできるってことでしょうか? たしかにその2科目が9割取れるなら受かるかもしれませんから。
そして、問題集で丸暗記というのは、どの程度の暗記をしようとしているのでしょうか? 単に出された問題だけを覚えるなら、実際の入試データの何分の1しか拾えないと思います。もしかして、何冊もやったり、問題文や解説文からいろいろ拾おうと考えているのでしょうか?
言うまでもありませんが、早慶上智という最難関大学に受かるために、770分しゃべり続ける必要があったのですよ? 生授業の講習でしたら、黒板の大きさや叱咤激励の必要性から、900分かけて授業しています。

確かに偏差値40の大学に受かるためだけなら、そこまでやる必要はありませんが、世の中に早慶上智以上の私立大学はありませんよね? なんだかX君のメールを読んでいると、早稲田大学のことを「ちょっと勉強すれば入れる大学」くらいにしか見てないのではないか? という気がしてきます。
過去問は解いているのでしょうか? 英語・国語も含めて、現在の自分の実力と合格ボーダーラインとの落差を、正確に把握した方がよいと思います。
これ以上説明すると、セールストークにしか見えなくなってしまうでしょうから、ここまでにしたいと思います。

<Xさん>
お返事ありがとうございました。とにかくすみませんでした。自分の考えが甘かったです。日本史の過去問は正直あんまりやってないんです。たぶん、逃げてたんだと思いました。石黒拡親先生の言葉で目が覚めました。やっぱり、いやなことから目をつぶってちゃいけないんだなと思いました。本当にすみませんでした。心を入れ替えて、2月まで必死に勉強することを誓います。こんな自分でも石黒拡親先生の文化史をやらしていただきたいと思います。本当にすみませんでした。申し訳ない気持ちでいっぱいです。

どのコースが近道か遠回りかを迷っている人に対して、ゴールで待っている人からいくら呼びかけてみても、気づいてもらえないことがあります。ヘリコプターに乗って高い所から見おろせば一発でわかるでしょうが、それができない場合は、推測するしかないのです。世の中にはそうしたことが天性の勘でできてしまう人も結構います。いわゆる要領のいい人ってヤツです。逆に要領の悪い人は推測できないばかりか、一見近道に見えるけれど実は遠回りなコースを選びがちです。そこに先輩や近親者で「信ずるにたる人」がいて、その人が「わかっている人」だったら、適切なアドバイスがもらえるんですが……。このことは、高学歴な家族の中で育つと、難関大の合格率が高くなる理由の一つだと思います。僕はそれとは真逆な環境で育ったため、妬ましさを感じつつ、今、こうしたアドバイスをしているつもりです。