『MARCH学習院あるあるチェック』の販売期間が、
もうすぐ終わろうとしていますが、
購入してくれた方から、早くも感想メールが届きました。
<Yさん>
MARCHあるある早速やったのですが、かなり良いですね☆ほんと作るの大変だっただろうなと身にしみて感じました。お疲れさまでした。先生やでるとこサイトの方々の苦労が無駄にならないように、ばっちりひろっていこうと思いますね(*^-^*)
<石黒>
ありがとうございます。
難しめの問題が多く入っていますが、
それらは各大学の特色が現れている問題なので、
できるだけGETしていってもらいたいです。
ご購入者の方にお送りした「使い方」をよく読んで、
うまく使いこなしてください。
さて、もう一つ。
鎌倉時代の地頭に関する質問メールです。
某大学を志望している場合、鎌倉時代の所領関係史料は、
ぜひともチェックしておきたいので、紹介します。
<Tさん>
お忙しいところ申し訳ございません。
こんばんわ早稲田予備校のTです。
鎌倉時代の史料で御家人の分割相続の
史料がありますが、それを復習かけていて、
地頭と職(しき)に関してわからないところ
があるのですが教えてください。この史料では
惣領の大友能直の所領のうち嫡男大炊介
入道が相続する相模国大友郷は公領であり、
惣領は郷司職を得ているわけですが、それとは
別に鎌倉殿に本領安堵され地頭となったわけ
ですが、このようないわゆる関東進止所領の
地頭というのは地頭とは言っても、郷司職を得て、
国衙に納入するわけで、“地頭職”と言うのですか?
<石黒>
まず、答えはイエスです。
簡単なところから入ってみると、
地頭というのは、当初は国ごとに1人置かれたなんて話もありますが、
結果的には荘園・公領ごとに置かれたと言いますね。
公領にも地頭はいるわけです。
それはなぜかと言えば、そもそも頼朝が出てきた時に、
関東の武士たちが、今までの既存の権力に、
自分の地位を保障されているだけでは心もとなくて、
頼朝にご挨拶にうかがって土地保障をしてもらうって話でしたよね?
それは荘園の荘官たちだけではないのです。
公領の郡司・郷司・保司たちも同じなのです。
というより、貴族である国司に地位を保障されている郷司たちの方が、
むしろ将来に不安を感じてるんじゃないでしょうか。
すでに崩壊している律令制の官職である国司によって、
地位を保障されても安心できないでしょう。
そうして、頼朝に土地保障をしてもらう、
すなわち御家人になるということは、
やがて地頭に任じられるということなのです。
大友郷の史料をチェックするとはさすが、T君ですね。
そして、鹿子木荘とか、東郷荘などのように「荘」ではなく、
「郷」ってことはが公領だと気づいたのも、なかなかやりますね。
ちなみに、ふだんの授業では、
荘園と公領の両方の武士を説明していくと、
生徒は混乱してしまうため、公領における地頭を無視して、
荘園における地頭の話ばかりをしているのです。
当然、ベースには「受験で公領の地頭について詳しく出ることはない」
というのがあるのですが。
<Tさん>
丁寧に回答していただきありがとうございます。
確かに授業では公領の話はしていないですね。
しかし合点の行かないのは“職”なのです。
“職(しき)”に関して言えば関東御領では地頭職
を与えたと言えますが、大友氏本領の相模国
大友郷のような関東進止所領でも“地頭職”を与え
たと言ってよいのですか?
惣領は郷司職を携えて鎌倉幕府の地頭を務める
と言うよりはむしろ、地頭職をもって名実ともに地頭と
なるということでいいのでしょうか?
<石黒>
「“地頭職”を与えた」と言って、いいのですよ。
関東進止所領のうち、荘園の地頭のことを考えてみてください。
今まで通り、荘園領主である貴族や寺社に年貢を納入しつつも、
御家人となって、地頭職を得るのですよ。
その武士は、そもそも荘官としての職、
たとえば下司職などを持っているはずですが、
それでも、地頭になっておきたいのです。
そうすれば、幕府以外の権力にクビを切られることはないからです。
このせいで荘園領主たちは、
のちに地頭の荘園侵略に手を焼くことになるのです。
ところで、公領の方でも同じことがおきているわけです。
郷司職などを持っていながらも、地頭になることで、
幕府権力によって地位が保障されるのです。
頼朝の側から考えると、関東御領と関東進止所領では、
地頭を任命できる権利を持っているわけです。
地頭職を与えることができるということです。
これでいかがでしょうか?
<Tさん>
大変よくわかりました。
確かにバックに幕府がいれば、領主なども文句は言え
ないし、惣領も幕府の地頭としてデカイ顔が出来ますね。
どちらも地頭として職を獲得しておいて決して損はないと言うことですね。
いやいや、なかなかおもしろい質問でしたね。