福山から広島へ、山陽の旅

僕が自転車旅行をするようになったきっかけは、昨年の秋に瀬戸内海の「しまなみ海道」をレンタサイクルでまわったことでした。海の中に島が点在する風景に、なぜか心を奪われてしまったのです。ようやく暖かくなってきたので、先週・今週と2度にわたって瀬戸内海に行ってきました。

初めてのかたにお伝えしておくと、旅行の基本スタイルは、

 折りたたみ自転車+テント泊+博物館めぐり+山登り です。

【4月1日】
新幹線を福山駅で降りて、福山城の中を見た後、芦田川の草戸千軒遺跡に行きました。しかし発掘調査後に埋め戻されたため、残念ながらなんの痕跡も見えませんでした。

次に自転車で1時間の地にある、鞆の浦(とものうら)をめざしました。ここは『崖の上のポニョ』の舞台となった場所だというので、「ポニョ定食でも食べるか……」とか「ん? ポニョって何の魚なんだ?」とか考えながら自転車をこいでいました。でもそんな定食などなく、そもそもポニョらしき絵すら見かけませんでした。


医王寺の太子堂から見おろした鞆の浦の全景です。

鞆の浦は、早稲田で朝鮮通信使が上陸した港として出題されてから気になっていました。そして瀬戸内海のことを調べていくうちに、「潮待ち」の港として要所だったことを知りました。ここは、満ち潮の時に四国をはさんで東西から流れ込む海水が、出会う場所なのです。しかも古い町並みが残っているというので、ぜひ訪れてみたいと思っていたのです。はい、町並み好きでもあるわけです。


この細い路地がたまりません。

対岸には仙酔島(せんすいじま)があり、そこでテントを張ろうとして渡船しました。ところが、ザックの中にテントのポールが入っておらず、やけくそで砂浜にそのまま寝ました。どれほど寒くなるのか心配でしたが、氷点下でも耐えられる寝袋だったので大丈夫でした。夜中に目が覚めると、そこに星空があるっていう経験ができました。


翌朝、烏の口岬まで歩き、夜を明かした砂浜を撮ってみました。

【4月2日】
ふたたび鞆の浦にもどり、船が出航する時間まであちこち散策しました。よくある案内図には「寺めぐりコース」などが書いてあるのですが、何よりもすごかったのは「太田家住宅」でした。

ここは江戸時代に「保命酒」という薬酒を独占販売していた酒屋で、家のいたるところに洗練されたハイセンスな意匠が見えます。ちょっとだけなら写真撮影しても良いということで、撮らせてもらいましたが、この蔵の壁など凝っていると思いませんか?

ほかにも室内から庭がどう見えるかなども、計算しつくされていました。小さな茶室もかなり凝っていそうでしたが、入れなかったのが残念です。七卿落ちの際に三条実美らがくつろいだ場所だそうです。

さて、鞆の浦から尾道までは船で渡る予定でした。昔の瀬戸内海航路を実感したいからです。ところが港に行ってみると、その船は「土日祝のみ運行」だったのです! この日は月曜日でした。開き直って自転車で行くしかありません。テント泊もできないのでコースを変更し、竹原・呉・広島をめざすことにしました。

松永駅から須波(すなみ)駅までは電車に乗り、そこに自転車を止め、まず筆影山(ふでかげやま)に登りました。道に迷ってあきらめかけましたが、ちょうど下山してきたおじさんに道を教えていただき、なんとかたどりつきました。多島美がたまりません。

【4月3日】
竹原のホテルに泊まり、翌朝、雨の中、古い町並みを見に行きました。ここは江戸時代に製塩で栄えた町です。入浜式塩田ですね。わりと大きな範囲で古い町並みが残っているのが良かったです。ここもアニメの舞台になっているようで、鞆の浦とは違ってあちこちに美少女(?)ポスターが貼ってありました。確かにソレ風の男子数名が徘徊していました。まあ町並みオタクの僕も似たようなものです。

そしてこの日は、暴風雨の日でした。竹原から呉まで電車で移動したのですが、呉では風にあおられて自転車なんてとても乗れたものではありません。しかも戦艦大和のある「大和ミュージアム」は休館日でした。つくづく運の悪いヤツですね。どこにも行きようがなくなって、ホテルで停滞しました。

【4月4日】
早朝、快晴のなか音戸の瀬戸をめざしました。ここは授業で説明しているものの、実態がわからずもどかしい思いをしていた場所です。現場に行ってみて、ようやくすっきりしました。音戸の瀬戸をまたぐ橋があるので、そこから見おろそうと思っていたのですが、しぶーい渡船があったので乗ってみました。

大和ミュージアムの開館時間に合わせて呉市街にもどり、さっそくご対面しました。10分の1のサイズの戦艦大和です。


こんな書き方をすると軍事オタクに見えるでしょうね。いや『宇宙戦艦ヤマト』が好きだっただけです。小学校の頃はテレビを見ていたんですよ。そのつながりで、実際の軍艦にも興味を持ったというわけです。他の船とくらべて、「大和」は美しいデザインをしているなあと思うのですが、いかんせんアニメと違って結末が悲惨です。ほれぼれしながらも、どうしても暗い気分になってしまいます。そういう意味では、すぐ隣にあった「てつのくじら館」のほうが興味深かったです。ここは海上自衛隊の活動が展示されており、潜水艦の実物に入れるのです。入試に直接関係ないので書きませんが、かなり学ぶものがありました。

そして急ぎ足で広島に向かいました。


時間がなかったので広島城は外から見るだけにして、平和記念公園に行きました。平和記念資料館や平和祈念館などを見て回りましたが、外国人の多さに驚くいっぽうで、展示スペースによっては全然人がいないことにも驚きました。