昨日の問題の答えですが、赤本は(3)を正解としていました。その理由は、河竹黙阿弥が活躍したのが幕末から明治維新期であるため「19世紀前期」という時期に合わないからとのことです。確かに『国史大辞典』によれば、河竹黙阿弥は「安政元年(一八五四)三月『忍ぶの惣太(都鳥廓白浪)』によって幕末の名優四代目市川小団次と意気投合し、以後慶応二年(一八六六)同優の死まで、彼のために多くの生世話狂言を書き、第一人者となった。」とのことですから、19世紀前期という条件には合いません。
しかし、それを言うなら(3)はどうなるのでしょう。錦絵が完成したのは1765年です。この年代は、20年前に同じ明治大学で出題されたことがあるのでよく覚えています。もちろん、その後の19世紀前期にも「浮世絵版画は活況を呈し」ていましたが、その手前に『弾琴美人』という鈴木春信の作品が挙げられているのを見れば、やはり鈴木春信の活躍の時期を考えるべきかと思います。鈴木春信の生没年は、1725−1770年です。いっぽう河竹黙阿弥の生没年は1816−1893年。この作問者は(2)を正文と考えているのではないでしょうか。
今年、明治大のこの学部は出題ミスを3個も連発し、入試直後にWeb上で「受験者全員を正解とする」と発表していました。この問題も出題ミスではないかと言いたくなりますね。でも文句ばかり言っていても何のトクにもならないので、ここは一つオトナになって、正解らしき解答を選ぶようにしたいものです。
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