仏教の次にわかりにくい、江戸時代の思想(2)

相変わらず11月6日の「日本史道場」の準備を続けています。僕の選んだ大問を編集スタッフが印刷用版下に仕上げる一方で、僕が作ったハーフサイズ模試を校正担当のスタッフがチェックしています。僕はというと、テキスト掲載の問題の解説を3分の2書き終わり、追加問題をプラスしています。

それから新企画「まぎらわしい美術図版チェック」の題材は、ピックアップが終わりました。第一印象がかぶる図版を並べ、見分けるポイントを伝授しようとしているのです。自分ひとりでは図版チェックがしにくいのはもちろん、何と何がまぎらわしいのかにも気づきにくいと思うのです。

さて、今日もそのテキストから漏れた問題を紹介します。2011年の法政大の問題です。

問 下記の1~8の文章(それぞれにa・bがある)について,つぎの指示にしたがって答えよ。
 a・bがいずれも正しい場合は,アをマークせよ。
 aが正しくてbが間違っている場合は,イをマークせよ。
 aが間違っていてbが正しい場合は,ウをマークせよ。
 a・bが共に間違っている場合は,エをマークせよ。

1
a 『広益国産考』を書いた大原幽学は,先祖株組合を作って農村復興を指導した。
b 安藤昌益の『自然真営道』は,全ての人々が耕作して生活する自然の世が理想社会であると説いた。

2
a 平田篤胤は『古史徴』などを著し,日本古来の純粋な信仰を尊ぶ垂加神道を大成した。
b 本居宣長は『古事記伝』を書いて,当時の思想が儒教の影響を受けていることを批判し,日本古来の精神にかえるべきだと主張した。

3
a 昌平黌を設立した塙保己一は,古代から江戸時代初期までの国書を『群書類従』として刊行した。
b 『経済録』を書いた荷田春満は,これを将軍吉宗に献呈して経世論の発展に寄与した。

4
a 海保青陵は『稽古談』を著し,商業によって藩財政の再建を果たすべきだと説いた。
b 本多利明は『西域物語』を著し,西洋諸国の事情を紹介して,交易による富国策を説いた。

5
a 竹内式部は『新論』を著し,京都で公家に大義名分や尊王思想を説いた。
b 山県大弐は『柳子新論』を書いて尊王斥覇を主張し,明和事件によって死刑となった。

6
a 山片蟠桃の『夢の代』は,天文学では地動説を紹介し,また,物価・貨幣制度においては自由経済政策を説いた。
b 富永仲基は『出定後語』で,仏教の経典は釈迦の説いたままの内容ではなく,釈迦没後における思想の発達の中で形成されたと述べた。

7
a 大坂町奉行所を退職後,家塾で陽明学を講義して『経世秘策』を書いた大塩平八郎は,江戸幕府の天保の飢饉対策を批判して蜂起した。
b 吉田松陰・勝海舟に兵学を教えた佐久間象山は『船中八策』を書いて開国・公武合体を説いた。

8
a 佐藤信淵は『経済要録』の中で,生産物の国家専売と貿易による富国策を主張した。
b 『統道真伝』の著者吉田松陰は松下村塾で尊攘倒幕派の人材を育て,君主の下に万民が結集する一君万民論を説いた。

解答は続きのページにあります。


正解 1ウ 2ウ 3エ 4ア 5ウ 6ア 7エ 8イ

消去法が効かないタイプの正誤問題は冷や汗をかかされますね。誤文にツッコミを入れることより、正文を正しいと言い切ることの方が大変だと実感できたのではないでしょうか。各人物の主張内容はどこまで覚えておくべきなのか。度を超すことなく入試に出るレベルまで、ポイントをつかんで学習したいと思いませんか? 文化史に不安を感じている方には、今度の「日本史道場」をお勧めします。

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