本当の出題率を知るための史料データ取得法

ひとくちに入試データと言っても、さまざまなものがあります。以前にある大手予備校が「過去ン年分の入試データを持っています」と新聞にうたっていたのは、なんと単なる入試問題の画像データでした。次に、意外と気づいていない人が多くて驚かされるのは、山川出版の『日本史B用語集』に掲載されている「頻度数」です。あれは入試の出題頻度ではなく、単に何種類の教科書に掲載されているかという数字です。それ「頻度」じゃなくて「掲載数」って言うべきじゃありませんか?

当方が取っているデータは、純粋に「正解を導き出すために必要だった知識のデータ」です。このため、問われた用語をチェックしているだけではないのです。たとえば墾田永年私財法についてなら、「位階(身分)による面積制限があった」ことが正誤問題で問われます。そうした「内容」の出題データも取るようにしているのです。そこまでしなければ、「何を」教えるべきかははっきりわかりません。

そして、史料問題の場合は「空欄語句」「意味聞き語句」「史料判別」「出典」など、これまた細かくデータを取るのです。前述の用語などとは別に、史料問題のデータベースをつくってあるのです。そして言うまでもありませんが、定番史料ではない未見史料のデータも取っています。

そうすると見えてくるのは、山川出版の『日本史史料集』に載っていない史料でも、入試では結構出題されているBランク史料があるってことです。それらは当然『どこでも史料問題』に載せています。さらに多くの市販の史料集に載っていない「未見史料」なのに、意外と出題されている史料というのがあります。そうしたものは『難関大用語集解』に「意外と出る未見史料」と題して34個の史料を収録しました。

さて、その史料問題について質問をいただきました。

<Yさん>
こんばんは。でるとこ史料問題を買うかどうかとても迷っています。でるとこ史料問題に載っていない問題はどうしたら良いのか教えてもらえませんか?よくある質問の所に載っているのはわかっているのですがWeb制限のため見れませんパソコンもありません。お手数おかけしてすみません。読むだけ日本史と日本史でるとこ日本史攻略法を使っています。とてもわかりやすいです

<石黒>
『どこでも史料問題−史料編−』に載っていない問題は、Cランク史料と未見史料になります。このうちCランク史料は、『どこでも史料問題−問題編−』および『頻出史料でるとこチェック』に結構載せられています。残るCランク史料は、冬の「日本史道場」で紹介するつもりです。一方、未見史料は史料読解力を養って解いてください。
また、こうした教材・講座を使わない場合は、山川出版や第一学習社などの史料集を見て、『どこでも史料問題』に載っていなかったものをチェックする方法があります。どこが空欄になるかとか、どの部分の意味が問われるかがわからないのが弱点ですが、それでも読んでみる価値はあります。
それからWeb制限のご指摘ありがとうございました。リンクを修正いたしました。よろしかったら再度ごらんください。

<Yさん>
返信ありがとうございます。ブログ見れました。ありがとうございます。昨日書店で史料問題を見てきたのですが、その時に買うなら□□の『□□□□□□□□□』が良さそうだなと思いました。一番欲しいのは石黒先生の史料集なんですが価格が高めなので、□□の問題集と石黒先生の『問題編』と『頻出史料でるとこチェック』を使おうかと思ったのですが、どうでしょうか?度々すみません。お願いいたします。

<石黒>
まあ何もやらないよりは良いのではないでしょうか。先日授業で紹介した、Bランク史料の○○○○は掲載されていないようですが。同じくBランク史料の△△△△も掲載されておりません。どんなデータの取り方なのかが想像つきます……。◇◇先生ご本人が本当に一題一題解いてデータを取ったわけではないのでしょう。そうしたリスクを十分理解したうえでお取り組みください。

上記の問題集は出題データにもとづいて作ったと表示しているのに、なぜBランク史料が掲載されていないのでしょう? 出題頻度の低いCランク史料もたくさん収録している問題集なのに、おかしいと思いませんか?

実はこの2つのBランク史料は、山川出版の『日本史史料集』にも掲載されておりません。そうすると邪推したくなってきます。もしかして、上記の問題集を作る際のデータ分析って、こんな作業だったんじゃないか? と。

(1)入試問題を片っ端から見ていって、史料問題を見つけたら山川の史料集と照らし合わせる。
(2)山川に掲載されていれば、そこに直接出題箇所をマーキングする。
(3)山川に掲載されていなければ、未見史料として無視する。

入試では未見史料問題もたくさん出題されているので、すべての史料問題のデータを取るのは大変なのです。そこで山川に載っているか否かで、振り分けたのではないでしょうか。これくらい単純に割り切らないと、作業効率としては悪すぎです。また、この作業ならアシスタントにやらせることもできますね。

一方、僕は山川では判断しませんでした。山川に載っていようが載ってなかろうが関係なく、単に史料文をパソコンに打ち込み、問われた用語のカードを1枚1枚作っていったのです。馬鹿みたいに時間のかかる作業でした。今でも入力してますが、新しい未見史料は毎年増えていますから、手間がかかることこの上なしです。もちろん誰も給料を出してくれません。今でこそ史料問題集を販売してますが、昔はそんなこと夢にも思わず、ただただ作業を続けたのです。どう考えても頭のイイ人がやる作業ではありませんね。

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