沖縄は国連の信託統治領とされたか

サンフランシスコ平和条約では、
沖縄についてどう定めているかを知っていますか?
誤解している作問者が非常に多くて困ります。
『でる日講義−アラカルト−』や、
予備校での沖縄史の授業の時に力説しているところです。
『受験生が本当にほしかった問題集 日本近現代史』の別冊解説にも、
ちょっとだけ書いていますね。
いわゆる「信託統治」についての話です。

そして、これをめぐる作問ミスはたくさんあるのですが、
授業でそれを説明すると、怪訝な顔をする人がよくいます。
たぶん「入試問題にそんなミスがあるわけない!」
って思ってるんでしょうね。
ところが、これにかぎらず作問ミスはそこらじゅうにあるんですよ。
どの大学とは言いませんが、
都内有名大学の問題には毎年うんざりさせられています。
大学側は真面目に対策した方がいいと思います。
だって間違って合否を発表したら、
後でえらい損害になっちゃうじゃないですか。

というわけで具体例を紹介しましょう。
2006年関東学院大学の問題です。

問 サンフランシスコ平和条約に関して正しいものはどれか。該当する番号をマークせよ。
(1)台湾の取り扱いについては,定められなかった。
(2)小笠原諸島はアメリカの信託統治領となった。
(3)千島列島はソ連の信託統治領となった。
(4)南西諸島は結局,信託統治領にはならなかった。

正解は(4)です。
これは正しい作問例です。

今度は間違った作問例を紹介します。
2007年早稲田大学文学部の問題です。

問 サンフランシスコ講和会議をめぐる以下の記述のうち,誤りを含むものはどれか。該当する記号をマークしなさい。
ア 講和会議の議長は当時のアメリカ国務長官アチソンがつとめ,日本からは吉田茂が首席全権として出席した。
イ 政府・保守系政党はアメリカ・ソ連の対立が続いている以上,一部の国と平和条約を締結できなくても止むを得ないとする「単独講和論」を主張した。
ウ 平和条約はソ連・中国を含めた全ての連合国と締結すべきである,という「全面講和論」が社会党・共産党,一部の知識人によって唱えられた。
エ ソ連はアメリカ主導の講和会議はアジアの政治的緊張を高めるとの理由で,講和会議への参加を拒否した。
オ サンフランシスコ平和条約によって日本は主権を回復したが,沖縄・小笠原諸島はアメリカを施政権者とする信託統治のもとに置かれた。

正解はエです。
ソ連は講和条約には調印しませんでしたが、
講和会議には参加しました。
しかし、オはどうでしょう?
実際には信託統治されたわけでもないのに、
「信託統治のもとに置かれた」なんて言っちゃってます。
はい、大人の配慮をしてあげましょうね。
作問した教授のメンツを立てて、これをスルーしてあげるわけです。
大学側はある意味、
受験生の「オトナ度」を測っているのかもしれませんし。

そして似たような作問ミスを2000年以降だけでも6題見つけています。
関西学院大学で2度、東洋大学、法政大学、帝京大学で1度ずつです。
『受験生が本当にほしかった問題集 日本近現代史』にあったのは、
大問56番の上智大学の作問ミスでした。
一方で、大問52番の慶應大学は正しく出題していましたね。

今日は結構おいしいネタを出してしまった気がしますが、
これくらい放出しても余裕なほど、
まだまだおいしいネタが詰まっているのが当方の教材です。
『でる日講義−アラカルト−』を観たら驚くはずです。
最後の締めに沖縄・北海道史、女性史、地図・グラフ問題をどうぞ。

相変わらず不定期更新が続いていてすみません。