昭和恐慌での正貨流出って?

今日は昨年以前にいただいていた質問を紹介します。

<Oさん>
河合塾藤沢校で授業を受けているOです。35番ページの三井のドル買いについて質問があります。三井にドルを売ったため日本円をもっているアメリカ人は、日本円の価値が下がる前に金に変えようとしたために金流出が起こったけど、そのアメリカ人は日本とアメリカどっちの国の金と変えて、どっちの国で金流出が起こったのですか?

<石黒>
そりゃあ外国人が持ってるのは日本円なのだから、
日本のお札を金に交換するんです。
そして日本から金を持ち出すんです。
そうして日本の金が流出した原因の三井は非難され、
団琢磨は殺されたのですよ。

今思えばこのOさんは、
「金兌換制度」の意味がちゃんとわかっていなかったのですね。
兌換というのを、単に「金に交換すること」、
すなわち「日本のお札で金を買うこと」
だと勘違いしちゃっているのでしょう。
いやいや「買う」わけじゃないんですよ。
「兌換」というのは、ちゃんと政府が、
一定の割合で交換を保証している状態なのです。
この時の日本なら、1円=金0.75gでした。

やはり経済分野は理解することが非常に重要ってことですね。
通年授業でも金本位制について最初に説明する時に、
「このテーマは前近代の荘園制のように、
 長い話になるから要注意です!」
と念を押すのですが、
今年の受講生はどうだったでしょう。
授業の復習が十分でなかったり、
授業そのものを休んでしまったりすると、
とたんにつまづいてしまうのが経済史です。
今からでも理解し直すしか道はありません。

ちなみに、前近代の荘園制や日中関係史などでしたら、
『でる日講義−経済・外交史−』で詳しく説明しています。
土地制度史なら近現代もカバーしていますので、
よろしかったら、どうぞ。