早稲田法学部の問題について

先日、大問IVの問4の問題についての質問にお答えしました。
その後、大手予備校でも解答速報が出されたのでチェックしてみると、
駿台予備学校・河合塾・代々木ゼミナールそろって
「い 軍部大臣現役武官制」としていました。
これは驚きました。
当方では解答を「お 大政翼賛会」と判断しております。
さすがに何かコメントすべきだろうと考え、
どういう解法をしたのかをここに説明します。

(2)の史料では、
「実際に政治干与の事実が軍人にあるにしても、責めらるべきは、まず政府であり、政治家でなければならない。」
と書いてありますので、これは政治家を批判している文章かと思います。
その後の、
「斎藤隆夫氏の事件を考えても、この事は明白だ。…今日の我が政治の悩みは、決して軍人が政治に干与することではない。逆に政治が、軍人の干与を許すが如きものであることだ。」
というのも、たとえ軍部からの圧力があったにせよ、
斎藤隆夫を議員除名にした議会(=政治家)
の方を批判しているように読めます。
平凡社の『世界大百科事典』の説明を借りると、次のようになります。
「このこと(斎藤隆夫の議員除名を決定したこと)は議会みずからが,議会内においても公認の戦争イデオロギーに疑義をさしはさむ発言を許さないという原則を承認したことを意味した。」
さらに史料は、
「黴菌が病気ではない。その繁殖を許す身体が病気だと知るべきだ。」
と続きますが、これも
軍人の政治干渉を許す政府が問題だと言っているように読めます。
従って、設問の「筆者の憂える状況」というのは、
「政治家が軍人の政治干渉を許してしまっている状況」となります。
そこで、政治家の近衛文麿が中心となって進めた新体制運動の結果
生まれた大政翼賛会の結成こそが、
合法政党がすべて解散したという意味においても、
政治家が軍人の政治干渉を許すできごとだったと当方は考えました。

ちなみに、この内容を早稲田大学にもお伝えしましたが、
残念ながら、個別にはお答えしないということで、
どう採点されたかは謎のままです。
いつものことですが、すごいショーバイです。

業界の方で当方の解釈の誤りを、
ご指摘してくださる方がいらっしゃいましたら、
ご教授くだされば幸いです。