日本史検定1級の論述問題

『でる日講義−とことん文化史−』を受講してくださる方には、
学校の先生や塾・予備校関係の方が結構いらっしゃいます。
以前にここで紹介させていただいたKさんから、
メールをいただきました。

<Kさん>
1年ほど前に「でる日講義」を買ったKと申します。
2006年の1月28日のブログでは私のことを取り上げてくれてとても嬉しかったです。
昨日、歴史検定の1級を受験してきました。
基準が60点であれば合格しているのかと思うのですが・・・まだ分かりません。
吉野作造が「デモクラシー」の訳語として「民主主義」でなく「民本主義」という用語を採用するように主張した理由を60字で述べよ。
という問題が出ました。
私は「問題は主権が天皇にあるか、民衆にあるかではなく、その利益が結果的に民衆の為、つまり民主本意になるべきであると考えた為。」という内容を書きました。
これで8点満点ですが、先生であれば何点付けてくれますか?
先生は大変お忙しいので、「2点!!」とか「0点!!」とか、簡単で構いませんので良かったら点数を付けてください。
「でる日講義」受講者の日本史検定1級合格者の第1号になりたいです。
そして先生の新しいDVD教材絶対買います!!
もし合格していたら先生にお礼を言いたいので、直接あいさつだけでも伺えたら嬉しいと思います。
万が一だめでも、1年後に絶対に再挑戦して、絶対に合格します。
お忙しいのに、最後まで目を通していただいて、ありがとうございました。
お体に気を付けて頑張ってください。

<石黒>
返信が遅くなり申しわけありません。
その節は『でる日講義−とことん文化史−』
をご購入いただきありがとうございました。
と思ったら、『アラカルト』の方までお申し込みいただき、
恐縮しております。

歴史検定1級とはまたすごいですね。
僕自身は一度も受験したことはなく、
2級の問題を少し解いてみたくらいなので、
なんともわからないところだったのですが、
予告されていた論述問題とは、
そのくらいの字数の問題だったのですね。
国公立大学のような400字くらいを書かせるのかと思っていました。
もっとも、それでは採点がしにくく、営業的に大変なのでしょうね。

さて、民本主義についての論述問題の解答ですが、
K様の解答は、
民本主義の内容を説明したものとしてはだいたい正しいと思いますが、
「『民本主義』という用語を採用するように主張した理由」となると、
求められている解答とは、若干ずれているかと思います。
要するに、なぜ「民主主義」とは言わずに
「民本主義」としなければならなかったのかを、
明確に書き加える必要があろうかと思うのです。
それは当時の日本が、明治憲法体制にあったためです。
大日本帝国憲法では天皇に統治権があるとされていますから、
「民主主義」と言ってしまうと、それに抵触してしまうわけです。

やや古いですが、
1993年立教大法学部の論述問題が参考になるかと思います。

問 なぜ、民本主義は「民主主義」と呼ばれなかったのか、その理由を記せ。

赤本解答:国の政治体制がどのような場合でも通用する民主化理論とするため。
旺文社解答:明治憲法の天皇主権に抵触するから

もう一つ、2000年慶應大商学部の問題も紹介します。

問 この思想(吉野作造が提唱した民本主義)の内容を50字以内で記述しなさい。

赤本解答:天皇主権の大日本帝国憲法の枠内で民衆本意の政治を進める必要を説き、政党内閣や普通選挙を主張した。(50字)

旺文社解答:主権在君を前提に憲政の根底を国民におき、普通選挙によって国民の声を反映した政党内閣制を主張する思想。(50字)

ついでに、各予備校の解答速報からも抜粋いたします。

河合塾解答:天皇主権の明治憲法の枠内で民衆本意の政治を実現するため、政党内閣の定着と、普通選挙制の導入を主張した。(50字)

駿台解答:主権の所在を問わず、政治の目的は民衆の福利向上とし、政策の決定は民衆の意向に基づくものとする思想。

代ゼミ解答:政治目的は民衆の福利にあり、政策決定は民衆の意向に基づくべきだとし、政党内閣制と普通選挙の実施を要求

というわけで、点数は何点とは申し上げられませんが、
おおよその正解はわかるのではないかと思います。

それにしても、1級を受験されたとは驚きました。
合格されたら、ぜひご報告ください。
もしお会いできる機会があれば、こちらもうれしく思います。

その後、Kさんから返信をいただいたのですが、
ちょっとオタク度が過ぎてしまったようです。

<Kさん>
あんなに細かく指導していただけて感激です。
これはもう授業料を払わないといけません・・・(笑)
あんなもの凄いデータに基づいたアドバイスが来るなんて、
先生の圧倒的な実力を思い知りました。
石黒先生を知らなければ他の先生でも満足できるかもしれませんが、石黒先生の存在を知ってしまうと先生以外は考えられません。

舞い上がってしまいそうなメールで、非常に恐縮します。
さて、明日、あさっても論述問題ネタでお送りしようと思っています。
明日には一つ、発表したいと思っていることもあります。
まあ、スタッフに止められなきゃ、ですけどね……。