スイス・アルプスへの旅(2)

マッターホルンに釘付けになっているツアーメンバー2人
マッターホルンに釘付けになっているツアーメンバー2人。ゴルナーグラートから下る途中。手前は僕です。

マッターホルンが標高4,478mであるのに対し、前夜に宿泊するヘルンリ小屋は3,260mです。ヘルンリ小屋に到着してからはベッドで横になり、何度かトイレに行っておなかの回復を待ちました。夕飯は豚肉のステーキにスープやフライド・ポテト、プリンなどでしたが、例によって多めの量でほとんど食べられません。消化機能が落ちていて、身体が「食べたらヤバい」と言っていました。
このとき僕の前に座っていたのは、翌日山頂まで同行してくれるスイス人ガイドのハイリさんでした。マッターホルン登山では、一般人はガイドと一対一でロープを結び合って登ります。そのガイドも国際山岳ガイドに限られています。彼らのステータスは非常に高く(ガイド料は1日で10数万円!)、その決定は絶対です。客の足取りを見て登頂をやめさせることもしばしばです。ふつうの日本人なら、半分の人が失格を言い渡されて下山させられるそうです。マッターホルンは急斜面が続くため下山が難しく、登りで体力を使い果たしてしまうと下山できなくなるからです。そうなったら途中の避難小屋で一夜を明かすことになります。ここを登った芸能人のイモトアヤコさんも、下山はヘリコプターだったそうです。荷物もカラだったらしく、さすが代わりがきかない芸能人、大切にされていますね(笑)

ふり返ってみると、この夕食の時からガイドの目が光っていたのでしょう。「しっかり食べないと明日登れないぞ」みたいなことを2人のガイドから言われました。僕はカタコト英語で「昨夜食べ過ぎた」と伝えたのですが、「何を言ってるんだ!」って感じでした。その後、ハイリさんは僕のウェアと荷物を念入りにチェックし、「明朝3時半の朝食に遅れないように」と言って就寝となりました。

登山者の早立ちがエスカレートしすぎないよう、出発時刻は3時50分と決められていました。それゆえ出発前の小屋の入り口は激混みになります。ところがハイリさんは、群れから離れて悠々と出発準備をしているのです。地元スイス人ガイドは優先的に先頭で出発させてもらえるはずなのですが……。やはりこれも今思えば、軟弱な僕の様子を見ての行動だったのでしょう。歩みが遅くて渋滞をおこすくらいなら、遅めに出発しようと。

そんなわけで登り始めの岩壁への取り付きでは行列ができており、18分も待たされました。ハイリさんはしきりに「Good?」と聞いてきますが、失格とされたくない僕は元気よく「GOOD!!!」と何度も返しました。実際、おなかは回復してきていたのです。後はぐいぐい登ればいけるはずです。

前日に取り付きの登りを下見するツアーメンバー
前日に取り付きの登りを下見するツアーメンバー。右下から左上にかけてフィックス・ロープ(固定された太い綱)が張ってあります。これをつたって登るのです。

今日はマッターホルンを眺めるハイキングに出かけました。8秒あたりに現れる尖った山がマッターホルンです。さあ、ほんとに登れるのか……。

Posted by 石黒 拡親 on 2015年7月18日

登山鉄道の終点ゴルナーグラートから見たスイス・アルプス。この駅には車イスの日本人旅行客が何人も来ていました。実に便利です。