受験に役立つ脳科学(7)暗記・テストのベストな反復法

久しぶりに脳科学の池谷裕二先生の本を読みました。そこに非常に興味深い実験結果が紹介されていたので、みなさんも参考にしてみてはいかがでしょうか。

ワシントン大学で、暗記方法についての実験がおこなわれたそうです。スワヒリ語40個を暗記する実験なのですが、どのように暗記して、どのように確認テストをすると記憶定着率が高いかが明らかになったのです。まず、学生たちを4つのグループに分けます。そして、暗記・テストをおこないます。

Aグループ:40個を通しで学習。その後に40個すべてを確認テスト。これを完璧に覚えるまで何度も繰り返す。
Bグループ:1回目の学習とテストはAグループと同じだが、2度目の学習からは、【確認テストで思い出せなかった単語だけを学習】する。再テストでは【40個すべてを試験】する。満点が取れるまで学習と試験を繰り返す。
Cグループ:確認テストで満点が取れなかったら、2度目でも【40個すべての単語を学習】し直す。再テストでは【覚えていなかった単語だけをテスト】する。不正解がなくなるまで学習とテストを繰り返す。
Dグループ:確認テストでは【思い出せなかった単語だけを学習】し直す。再テストでも【覚えていなかったものだけをテスト】する。不正解がなくなるまで学習とテストを繰り返す。

この4グループは、いずれも5~6回の繰り返しで40個の単語を習得できました。差が出たのは1週間後の再テストの時です。このうち2グループは約80点取れたのに対し、残りの2グループは約35点という低い点数にとどまりました。それぞれどのグループのことだと思いますか?

成績が良かったのはAとBで、悪かったのはCとDでした。AとBに共通するのは、【40個すべてを試験】したという点です。ということは、CとDのように【覚えていなかった単語だけをテスト】するのでは、長期記憶に役立たないわけですね。学校や塾では、テストの点が悪かった生徒に再テストをさせることがあります。しかし、できなかったところだけをテストするのでは、その場限りの記憶にしかならないということです。これは衝撃的ですね。先生の指導法自体が付け焼き刃的なもの、一夜漬け的なものに陥ってしまっています。僕も「問題集をやり直すときは、間違えたところだけをやり直せばいい」と言ってしまっていましたが、考え直さなければなりません。何度も繰り返しアウトプットすることが大切というわけですから。一度正解したくらいで安心してはいけないってことですね。

もっとも英単語暗記などとは違い、日本史の問題集はすべての用語を網羅していません。このためいくら1冊の問題集を繰り返し解いたとしても、そこに載っていない用語の習得にはつながりません。よっぽど一問一答集を繰り返した方がマシです。しかし、ここにも落とし穴があります。一問一答集では、正誤問題や考えて解く問題に対応できないからです。いや、そもそも「入試で出る用語」を網羅していない一問一答集もあります。

そう考えるとやっぱりベストな学習法は次のものでしょう。

 (1)日本史を授業や教科書・参考書などでよく理解する。
 (2)出るところだけを整理したまとめを覚える。
 (3)まとめを白紙に書けるようにする。

それにしても上記の正解率の落差には驚きました。たしかに思い当たるところはあります。僕自身が入試問題を解いていて思い出せない用語や漢字に出会った時、すぐ調べずに一生懸命思い出したものは(たとえ思い出せなかったとしても)、その後も定着していることが多いのです。

受験生を見ていると、覚えるのに時間がかかりすぎて「確認テスト」になかなかたどりつかない人がいます。それはもっとも学習効率の悪いタイプでした。覚え切れていなくてもテストに挑んだ方が、記憶効果が高いわけですから。テストというものは何度も繰り返すのが当たり前なんですね。思い出すために汗をかくことを厭わない人間になりましょう。

あるある正誤問題

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