なんと、早大入試の補助試験監督をされていた方から、
メールをいただきました。
<Xさん>
はじめまして。私は早稲田大学政治経済学に所属しています、Xと申します。突然のメールで大変失礼と存じますが、平にご容赦ください。もう受験生ではありませんが、入試問題を解くのが好きで、いつも先生のブログを拝見させていただいております。自分は受験期には予備校などは行かなかったのですが、先生のご著書である「受験生が本当にほしかった問題集」を使用させていただいておりました。
早速ですが、22日に行われました2008年度早稲田大学社会科学部の入試問題の件でぜひ石黒先生にお尋ねしたいことがありまして、今回無礼を承知でメールさせていただきました。
私は本日、早稲田大学で補助試験監督をやっていたのですが、日本史の試験中に時間があったので問題を見ました。すると、大問1の確か設問2、聖徳太子のころの政治についての正誤問題で(誤文を1つ選ぶものでした)、本来「冠位十二階」となるべきところがが「“官位”十二階」となっていました。さらに、他の選択肢を吟味していくと十七条憲法についての文で「和を尊重し…訴訟や議論を認めなかった」(記憶があいまいなのでご容赦ください)とこちらは明らかに間違っているようでした。
こうなると誤文が2つになってしまうと私は考え、そのことを主任監督にも伝えたのですが、試験本部から何の連絡もなくそんまま試験が終了してしまいました。私の友人の受験生は、前者を変換ミスと見て、明らかに間違っている後者の文を選択したようなのですが、この場合はやはり両方正解になるのでしょうか。それとも“官位十二階”という一般的ではないですが、特別な表記が存在して、それは正解文となるのでしょうか。昨年、私は社会科学部を受験し、やはり正誤問題で誤りがあったので今回も気になりメールさせていただきました。お忙しいところ失礼いたしました。
<石黒>
ご連絡どうもありがとうございます。
「官位十二階」は見過ごしていました。
教科書的には聖徳太子が定めたものを、
「官位十二階」と書くことはまずありません。
このため、その選択肢も厳密には誤りとなってしまい、
正解が2つ存在することになりますね。
でも、たぶん作問者の単なる誤植だろうと思われます。
なぜなら、早稲田ではそうした漢字1文字だけを、
これほどの意地悪さでウソつく誤文は出さないからです。
いや某××大学だったら、むしろそれをやるんですが……。
また、今回の社学の問題でも、
「井上馨」を「井上毅」とウソつく誤文は存在しましたが、
それはちょっと違うと考えます。
そして、早稲田大学が今まで、
憲法十七条の内容で正誤問題を出題してきたことをふまえると、
Xさんが指摘されたように、
今回もそこに的を絞った誤文を作ってきたのだろうと推測しました。
というわけで、さっそく解答速報に反映させていただきました。
ありがとうございます。
それにしても、試験中にそれを指摘されたというのはすごいですね。
さすが早稲田政経だけのことはありますね。
ちょっと驚きました。
それでも何の対応もなかったということは、
教授サイドがその短い時間では決断できなかったんでしょうね。
本来ならばこの設問は全員正解とすべきでしょうが、
大学がどう処理するかはわかりませんね。
「『官位十二階』と表記することもある!」
と言い張る教授がいるかもしれません。
逆に、こっそりその2つの両方を正解としてしまうかもしれません。
ちなみに、無礼なんてことはまったくありません。
むしろ当方の問題集を使ってくださっていたということは、
こちらこそお礼を言うべきです。
これまた、どうもありがとうございました。
入試の試験監督中に誤りを指摘したところにも驚きますが、
僕は別の点にもうならされました。
それはこのメールの文章のうまさです。
これが政経学部の1年生ってことか……と。
実に大人な文章です。
高校生にも気づいていただけるでしょうか……?